日本で栽培される、生来の種なし柿は、ほぼすべからく、渋柿である。
古くは、干すことで渋を抜き、食用とした。
焼酎などのアルコール分で渋抜きする技術も編み出された。
最近の主流は二酸化炭素。
二酸化炭素が充満する部屋に二日間入れて、渋抜きを行う。
以前よりずっと短い時間で処理ができるようになった。
ちなみに、“渋抜き”と言うが、渋=タンニンをコーティングして、人の舌に感じさせなくさせるだけで、タンニン自体は、柿に残る。
目には見えるようになり、それが、黒いゴマ状の、あれだ。
普段、北田さんは収穫してきた柿を農協に預け、二酸化炭素の処理をしてもらう。
二日後に引き取って、食味チェックを行い、渋が抜けているのを確認してから出荷する。
ところが、あまり遅くになると、この設備が閉鎖してしまうのだ。
そこで、ひとつ考えられた方法が、樹上脱渋、紀の川柿である。

紀の川柿は、8月上旬の、柿がまだ青い頃に、袋をかぶせ、角砂糖のような脱渋剤を入れておく方法だ。
ひとつひとつの柿に袋をかぶせるのは、途方もない作業だが、農協の脱渋設備が締まることを見越して、実施する。
袋をかぶせる時には、雨が厳禁で、天気予報とにらめっこし、三日間ほど雨が降らない時期を選定して、作業にかかる。

もちろん利点もある。
それは、サイズと糖度と日持ちだ。

紀の川柿に仕込んだ場合、通常の渋柿と違い、即出荷が可能だ。
だから、日持ちも良い。
ギリギリまで樹上におけるので、サイズは二回りくらい大きくなり、糖度もグンと高くなる。
「黒ゴマが多い柿は甘い。」という俗説があるが、一つ一つの黒ゴマは、前述の通り、コーティングされたタンニンなので、あながち間違いではない。
紀の川柿は、この黒ゴマが、果肉の中にびっしりと入る。
知らない方が切ったら、おそらくぎょっとするだろう。

北田さんは多忙を極める中、この袋掛け作業を今期も敢行。
大きく実った紀の川柿がいくつも生っていた。
これは、そのまま食べられる!と思い、頂いたところ、カリカリした食感で、鮮度感があり、甘みもしっかりある。
糖度は19.1度!。

よく言われる、黒糖のような甘さを感じた。
そういえば、月餅の甘みには、干し柿が使われると言うから、柿には砂糖に代わる甘味料としての優秀な役割もあるのかもしれない。