“毛豆(けまめ)”という枝豆がある。
青森の、板柳地区を中心とした地域の在来種。
代々、農家で一子相伝に伝えられてきた枝豆だ。
晩生のため、9月、しかも、中秋の名月の前後に収穫期を迎えるという枝豆だ。
ダイナミクス農法という有機農法の一つの考え方がある。
太陽よりも、月の満ち欠け、月の暦に合わせた播種、施肥、水やりをすべきだという考え方で、実際に世界中で実践されている。
だから、生産者の赤石さんが言う「中秋の名月の頃に、毎年、収穫するんですよ。」という言葉は信憑性があり、赤石さんの経験値はもちろんのこと、裏付けもあると思った。
実は、さくらんぼのお取引をする小野さんにご紹介いただいた生産者さん。
青森県外には出さない主義だったけれど、昨年から、出荷していただけるようになった。
実際、地元での毛豆の人気は凄まじいそうで、マルシェに参加すると、枝付きの枝豆のまま、行列ができて、欠品すれば、刈り取って持ってくるまで待ってくださるほど、地元で愛されているらしい。
9月の、この時期に食べられると言う枝豆は、関東では少し違和感があるかもしれない。
が、津軽地方では、中秋の名月にお供えして食べる風習があるのだそうだ。

「これこれ、毛豆だけは、紫色の花を咲かすんですよ。」

初めてお会いするのにも関わらず、赤石さんと赤石さんのお父様は、笑顔が印象的で、私を快く迎えてくださった。

豆自体は、まだ収穫前とあって、まだまだ薄い。
カメラのピントすら合わなかった(腕と知識不足!)。
赤石さんは、代々の農家ではなかったそう。
お父様は左官屋で、毎年冬になると東京の八王子に出稼ぎに来ていたらしい。
ある年、突然、「お前、夏の間は農業やるぞ、畑、用意しておけ。」と赤石さんが指示を受け、農業に携わるようになった。
「じゃあ、毛豆は、どちらから?」
「友達の漬物屋さんのお母さんから譲ってもらいました。譲るのは初めてだったとか…。」
青森では、中秋の名月に毛豆を食べるだけではなく、冬に備えて、茹でた毛豆を塩に浸けて、漬物にする風習もあり、よく売れるらしい。
「それで漬物屋さんが代々引き継いで来たんですか。」
新期に就農したにもかかわらず、畑はあちこちに、複数あり、栽培品目が多い。

昨年譲ってもらった毛豆を始め、チョロギ、空心菜、ピーマン、ハックルベリー、ぶどう(ナイアガラ、スチューベン)、ほおずき、夕顔、桃、プルーン、イチジク、各種ミニトマト、ケロッコリー(ケールとブロッコリーの掛け合わせ)、キウイ、赤しそ、なす、きゅうりなどなど。
その中でも、私が注目したのは“ポコポコ豆”という豆野菜。

後で調べたけれど、正体は分からなかった。
「地元に伝わる豆野菜で、うまいっすよ。僕ら勝手に“ポコポコ豆”って呼んでますけど。筋もとらなくて良くて、両端を切って、茹でれば食べられます。インゲン? いやスナップエンドウに近い?」
足早にいくつかの畑を案内してもらった。

「ほら、来そうだ。」と上空に目をやる赤石父子。
もう少し毛豆の様子を見たかったのだけれど、断念して車に乗り込みや否や、どかっと雨が降り始めた。
私はチェックしてなかったのだけれど、雨予報が出ていたらしい。
たちまち土砂降りに変わり、ワイパーがやっと追いつくくらいの雨量になった。
「危なかったー」
「危なかったですね!」

ご自宅に着き、岩木山に向かおうとする私に、「今から山に行くんですか?いや、ちょっとそれは。あ、ま、でも上がってってください、ご飯食べて来ません?」
お昼ご飯をごちそうになってしまった。
お父様と赤石さんが順番に台所に立ち、先ほど手に持っていたなすや空心菜、赤しそ、夕顔がどんどん食卓に並んだ。
先ほど、生でかじったポコポコ豆も。
リビングに腰掛けて、男子3名。
今しがた、車を降りるときに挨拶してくださった好青年は、息子さんだそう。
「息子さんは食べないんですか?」
「うちはもう、勝手で…。勝手に食べたいものを食べたい時に作ってそれぞれ食べるんです。」
いずれの野菜料理も美味しくて…。
それは、また今度。
「青森県人は何か上げるのが好きで…」
雨の中、笑顔でまた見送ってくださった。
期せずしてご相伴に預かった。
だからではないけれど!
頑張って、毛豆をご紹介していきたいと思う。