佐藤さんのご自宅から、車で数十秒ほど走らせると、たちまち四方八方がとうもろこし畑になった。

ご自宅の周りにも十分に広いとうもろこし畑があったが、こちらは数倍広い。
さらに進むと、見渡す限りとうもろこし畑に。
「すごい!北海道より広いじゃないですか!?アメリカみたいだ。」
「え?そうですか?」
現在、13町歩を管理。
それでも植えている本数は30万本だそうで、昔より減らした。
以前は、都会から夏休みに帰ってくる大学生を期間バイトで雇用し、大規模に栽培ができた。
段々と人が集まらなくなり、今のような、より、家族経営に近い形態になったのだとか。

北海道の、十勝平野などのとうもろこしがほぼ専門の農家なら、分からない。
私がそれこそ、嶽きみの後にお願いしている赤井川村のとうもろこし畑は、ここまで広くない。
「フィールドオブドリームズとか、ライ麦畑で何とやらとか、アメリカ映画の一シーンみたいです。見たことないですけど!」
ーなんて良い加減な。
雨も小降りになり、雲の合間に青空も見える。
岩木山も、頂こそ見えないが、その稜線は見えるようになってきた。
「だって、この一区画だけで、一町(=100m×100m)ありますよね!?」
「えっと、ここはうちの畑ではないんですけど、だいたい、一区画、1.4町あります。」
ほぼ真四角の畑には、一台の軽トラが通れる程度の道幅を持った農道が碁盤の目のように通る。
その区画が何枚も続いているのだ。
「このあたりが、まあ、嶽高原でも一番とうもろこし畑が集中しているところですね。」
岩木山だけでなく、周り中が山に囲まれており、その山の中腹から霧が立ち昇る。
岩木山の反対側の空からは、雲の切れ間から太陽光が差し込み、きれいだった。
「もう少し、上の方まで上がると、畑と岩木山が一望できるところになりますんで。」
自分がワクワクしているのが分かった。
「でも、あれかな、正直、かなりぬかるんでいるんで、車から降りない方が良いかも。」
え、そんな…。
と思ったものの、ここは地元の方の忠告をきちんと聞こうと思った。
泥だらけの靴で、自分が汚れるのはまだしも、軽トラも、レンタカーも、帰りの夜行バスにも迷惑をかけることになる。
なだらかな斜面を登り切り、一番上まで来て、佐藤さんはさっと軽トラを降り、私のために、とうもろこしをささっと刈り取り、こちらにポーズをとってくださった。
有難い。
にこやかな落ち着いた笑顔を振りまいてくださった。
あ、やっぱり親子だと思った。

ご自宅までに帰る道すがら、「どうですか、親父、変わってましたか?」とご質問。
「ええ、ああ、はい!まあ、10数年ぶりですから。私も当時、結婚もしてなければ、子どももいませんでしたし。」
今や私だって4児の父。
佐藤さんにはお孫さんだっている。
「でも、本当にきれいで広いですね。」
嶽高原のとうもろこし畑にすっかり魅せられた。

「朝もまた違う感じできれいですよ。岩木山からやっぱり霧が立ち昇る感じが。朝の方が、夏でも良く見えるんで。」
「そういえば、ここから見える岩木山の形、やっぱり市街から見えるのと違いますね。」
「はい、もういろんな形があります。そこら中で違いますよ。」
見る角度が違えば、当然、山の形は違って見える。
でも、なんだかそれぞれ美しい。
親子2代で作る、嶽高原のとうもろこし、嶽きみ。
今年もシーズン残り僅か。
大切に、きちんとご紹介したい。