雨宮さんは、良い意味で、肩の力が抜けている。
「無理はしないようにしているからね。」
どういうことか。
例えば、桃の栽培には、剪定や施肥、防除、摘果、摘葉、袋掛け、反射シート、収穫、選果に梱包などがある。
雨宮さんは品種をリレーすることで、切れ目なく出荷してくださるのが、すごいところ。
日川白鳳、加納岩白桃、一宮白桃、夢桃香、本白鳳、夏っこ、嶺鳳、浅間白桃、川中島白桃、紅錦香、さくら などなど。
6月15日頃から、8月末まで、桃の実の収穫と桃の樹のケアが1週間タームで繰り返し続く。
すでに大変そうだが、ここで一案。
時期がかぶる品種は、あきらめているのだ。
昨年あった品種が「もう切っちゃったよ。」ということも。
また、無駄に長くもしない。
例えば、日川白鳳よりも早い、極早生品種に“千代姫”があるが、こちらも切ってしまった。
作業が前倒しになって、大変だからだ。
黄金桃も、そうかもしれない。
黄美娘(きみこ)、甲斐黄桃、黄金桃、ワッサーなどを植えていた時期もあるが、雨宮さんが力を入れる浅間と時期がかぶるため、切ってしまった。
今は、ワッサーと新たに植えた黄美娘があるのみ。
品種の選抜に余念がない、とも言えるかもしれない。
ブランド産地の桃農家である矜持か、新品種も必ず売れている。
自分の面積の半分から1/3の畑には、絶えず、新品種を植え、様子を見ている。
その中で、夢桃香(ゆめとうか)は、山梨県が推奨していることもあるだろうけれど、これからの品種として有力とのこと。
千代姫に八幡白鳳を掛け合わせた桃に、日川白鳳を掛け合わせて生まれた品種。
親に似ず、固い桃。
白鳳はやわらかい、ジューシーな桃で、親はすべてやわらかい白鳳系にもかかわらず、固い。
そしてやわらかくならない。
日持ちが良く、贈答にも向く。
桃=やわらかいと思う方には、少し違和感のある桃かもしれないが、サクサクした食感の割に、かなりしっかり糖度が乗る。
同時期の日川白鳳よりも、2~3度、糖度が高い。
栽培のしやすさも手伝って、今後、必ず主力になる、という見立てだ。
「それでも、私は本白鳳と浅間白桃が好きです。」と話を向けると、「そう、そうでしょう?」と頷いてくれた。
「俺もそう思うから、良い枝だなあと思うと、それを使って増やして行ってるの。」
本白鳳も浅間白桃も、温暖化の影響で、毎年、減る一方。
新規に就農した、経験の浅い農家では作り切れないらしい。
7月上旬の、ジューシーでやわらかな本白鳳は、ザ・白鳳、あるいは、関東の方にとっては、ザ・桃と言えるお味。
本来の、収穫当初は固く、段々と柔らかくなる白桃系の王様は、浅間白桃だと思う。
糖度が高く、食味が良い。
こちらは7月中旬だ。
「今年は5日っから10日早い。」
花の時期の温度が高かったそうで、事実として、例年よりも早く収穫が進んでいる。
私も、見逃さぬよう、着いていきたい。