前の前の前の店長の真似なんだと思う。
りょくけん松屋銀座店の朝番に入った際には、先頭を切っているつもりで、店頭の、ディスプレイコーナーの前に立って、朝のご挨拶をしている。
「おはようございます、いらっしゃいませ。」
入店してくださった一人一人のお客様に対し、お礼といつでもお声をおかけください、自分はここに居ます、とご挨拶しているつもりでいる。
お客様からすると、ややこそばゆいかもしれないけれど。
そんなことを考えながら、角度30度のお辞儀を繰り返していたら。
「社長ーっ!」
というお声が、反対側のコーナーから聞こえたので、思わず振り返った。
私も会社の代表になって12年が経つ。
たとえ私を呼んでいるわけでなくとも、振り向いてしまう。
振り向いた先には、今まさに皇居周りのランニングを終えたのだろう、とすぐに分かる出で立ちでいつも良くしてくださる常連のお客様が、日に焼けた顔で、こちらに笑みを浮かべてくださっていた。
少し嬉しくなって、そのまま反対側のコーナーに回って、お話をした。
なんでも、今度は100㎞走るレースに出場するそうで、その練習中なのだそうだ。
お仕事も現役でまだまだしており、お忙しいはずなのに。
素直に尊敬してしまう。
「ウォルドルフサラダ!定番になったね~。」
昨年末にデビューさせ、セルリー(セロリ)がある間は、ほぼ定番でお出しし、一定の人気を得たサラダだ。
りんご、セロリ、くるみ、マヨネーズが四大要素。
それ以外にヨーグルトだったり、はちみつだったり、レーズンなどを加えたりする。
「そうなんですよ。ウォルドルフホテルというニューヨークにあったホテルのシェフが、特別な日に、と考案したサラダらしいんですけど…。」
”フルーツヨーグルトサラダ”という名前にする案もあった。
でも、あえて、ウォルドルフサラダという名前にした。
知っている人は知っているだろうし、「何これ?」と興味を引き、疑問に思っていただいて、お客様との会話になれば良いな、と思ったからだ。
「あ、あるね、ウォルドルフホテルって。」
意外そうな表情を浮かべた。
「へえ。そうだったんだ。」
ドイツ人のシェフの名前か何かだと思ってた、とそういえば、よく言われるが、そうではなく、ニューヨークにあった高級ホテルの名称なのだ。
お客様は、海外で主に仕事をされており、方々に出張もされるのだろう、ウォルドルフホテルの存在をご存じで、さっすがーと思った。
そういえば、販売のスタッフさんが、ウォルドルフサラダの写真を撮って良いか聞かれたことがあると、報告があった。
気になる撮影の理由は
「ウォルドルフホテルに勤めているんです。同僚に見せます。」
だったとか。
元々あったニューヨークのウォルドルフホテルは、もう無い、と聞いている。
でも、まだ世界を見渡せば、その存在があるそう。
その存在を知っているお客様に羨望?憧れ?のような気分を抱くとともに、たぶん少し「良く見つけてきてヒット商品にしたね。」とお褒めを頂いて、不思議な気分になった。