和歌山市と有田市は、さほど離れていない。
車であれば、1時間とかからない。
ノンアポだったので、登尾さんに架電。
「17時くらいには着けると思いますので!」
「おお!なに、井上んとこ行ってたんか!? 生っとったか? ああ、ええよ。おいで。
あ、やっぱり用事があって、18時には出ないといけんのやった。」
「それまでには着けると思います!」
ーというつもりだったが、まず和歌山市内は、渋滞だった。
日も暮れてきた。
ふと、大通りの交差点で信号待ちをしていたら、右手に、やけに立派な建造物がある。
「あ、和歌山城だ…!」
徳川御三家、紀州藩のお城である。
今は公園として整備されている模様。
八代将軍 徳川吉宗を生んだ家である。
立派なはずである。
高速道路に入り、有田のICで降りる。
有田市内は、大通りこそ運転しやすいが、少し中に入ると、すごく複雑で…。
案の定、迷った。
あっという間に17時半を過ぎ、日が沈み、真っ暗に。
登尾さんからへ再度架電。
「迷っちゃいましたー!」
「今、そこに何がある?」
と聞かれても、民家とみかん畑…。
目印になるものがない。
「国道から左に入ったか? そこからは右やで。」
私は国道から入った道が、枝分かれになったところを、左に進んだ。
「え?そうでしたっけ?左だと思ったんですが。」
国道まで再び戻り、枝分かれした道を右に進むも、見たことのない風景で、袋小路。
辛うじて切り返して、再び戻る。
軽トラに乗ったドライバーさんに、藁をもつかむ思いで、道を聞いた。
「登尾さん?登尾さんはここらじゃないで。もっと西。もっと西の方よ。カラオケ屋さん分かる?あそこから左に入ってずっと行ったとこ。
あれあれ?
最初に行った方で合っていたのか…。
再び戻る。
途方に暮れていると、登尾さんから入電。
「まだか!? もう出んといかんよ。どこにおるんや!?」
「カラオケ屋さんの前にいます…。」
「おお、カラオケ屋か。もうそこで待っとれ!行くから!」
18時から出かける予定がある。
もう17時40分も過ぎた。
そう言われるのも当たり前だ。
最初に行った道で合っているとすれば…。
10分くらいかかるのかな、まずいな…。
落ち込んでいたら、ブロロロロ~とバイクが目の前に現れ、ライトをこちらに向けられた。
「よお!」
満面の笑みを浮かべた登尾さんが、そこにいた。
ホンダのカブにまたがって。
〇-ヘルで。
なんとも豪快。
驚くととともに、謝り、そのまま着いて行った。
登尾さんの後に、レンタカーでついていく。
右へ左へ、颯爽としたカブ捌きに惚れ惚れしてしまった。
まるで仮面ライダーの一場面。
道は、最初のもので合っていた。
くねくねした道を行き、新しめのお宅を右手に見かけたら曲がり、迷わず突き進んでいく。
先ほどは迷い、立ち止まり、戻ってしまった。
思った以上に登っていく。
ほぼほぼ登り切ったところで、みかん畑の合間の細い道を右に入っていくと、登尾さんのご自宅に着いた。
「ああ、ここだ~」
再び満面の笑みの登尾さん。
腰はほぼ直角に曲がっているように見えるのに、みかん農家としてまだまだ現役だし、バイクも自由自在に運転していた。
「井上のとこに行って来たって!?」
「はい、大きな樹で感動しました~」
「松山もあそこから穂木持って行ってるんやで。」
「はい。今年はどうですか?」
「う~ん、ベーコンはあまり生ってないな。」
登尾さんのアボカドは、みかん畑に点在している。
上の方の山にも何本かあるのだけれど、軒先にも2本、若木がある。
「これ、そうですよね。」
目を凝らして見るが、見えない。
何しろ真っ暗だ。
そこは高性能カメラの撮影モードに任せ、フラッシュを焚いて写真を撮り、後で確認することにした。
「11月中旬くらいですかね。」
「その頃やな。」
18時まで時間がない。
そそくさと手土産をお渡しした。
「なんやもっとゆっくり来ればええんのに…!それともっと早くに、先に言ってくれれば…。」
仰る通りなのだけれど「行く。」と言って行けない時の方がつらい。
一度だけ、上司と行った出張で、そう言うことがあったっけ。
何やら、色々と準備してくださっていたようで、あれは申し訳なかった。
いつもながら、ぶっきらぼうな、勢いのある、でも優しい笑顔の登尾さん。
いとこであるという井上さんと、似ているのに、似ていない。
その両極端を楽しんだ。
「それじゃ、すみません、急に来ちゃって。」
再び、真っ暗な道を降り、一路、関西空港に向かうのだった。
早朝5時に起床し、成田空港から関空へ来て、紀の川市→田辺市→和歌山市→有田市と回った。
少々クタクタだった。
少し頭も痛いような…。
ハイテンションだったのが落ち着き、段々と頭の痛さを感じ始めたのだった。