りょくけん東京

りょくけんだより
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アボカド

天然記念物に指定した方が良いのでは。

和歌山市はすこぶる都会だった。
例にもれず、道路も普通に渋滞する。

不動産業が本業だと言う井上さん。

待ち合わせたコンビニで軽くご挨拶をすると、井上さん自身はあまりタッチしておらず、出荷や梱包を担っていると言う娘さんをご紹介いただいた。
二人が乗る車について行く。
和歌山市であっても、少し中に入ると、道がとても細い。
くねくねだ。

何回か、対向車と譲り合いをした後、車を停めた。

どこぞの地元の公園のようである。

そこから、徒歩2分ほど。
目には見えないが、海が近い感じがする。
浜の砂が歩道を覆っていのと潮の風味がする。

「ここです。」

一応、柵はあるが、ガラガラっと門を開けると、そこには、何の不思議もなく、アボカドの巨木たちが、ごくごく自然に、不規則に、何十本も立ち並んでいた。

今まで見てきたような、幼木じゃあない。
両手では抱えきれない幹。

あまりにも、自然に立ち並んでおり、葛西臨海公園の樹々だ、と言っても区別がつかないだろう。

「え? これアボカドですか?」
「ええ。」
さらりと答える井上さん。

「すごい!すごい、すごい!」

横へ横へと仕立てるようにしているそうだが、樹高は20m以上ある。
直径80㎝ほどある幹。
あちらこちらへと伸びる枝。
うっそうと茂る葉。

およそ、今まで見た国産アボカドの畑とは異なる風景だった。

「樹齢は、、、60年くらいですか?」
「いやいや、私がこどものころからあるので、60年じゃ、きかないです。」
「よく、もたしてくださいました。」

アボカドは、根付けば、すっと伸びるのだけれど、根付かないと、すぐ枯れる。
日本では台木を使うことでクリアできるようなのだけれど、何年も継続して栽培することは、まだうまく行っているとは言い難い。

「いやいや、、親父から『絶対枯らすな。』と言われてましたので。」
「ほんとにすごいです。」
「そう言ってもらえると、やってて良かった、嬉しいです。」

顔や体躯は、登尾さんにそっくりだし、声も似ているのに、口ぶりは相変わらず紳士で落ちついている。

足元は、アボカドの落ち葉でいっぱい。
歩くたびに心地よい、自然の音がする。

目を凝らしてよく見ると、アボカドの実がそこかしこになっている。

「これ、これは種から出た芽ですよ。」

何気なく、ひょこんと出た、実に頼りない木とも草とも言えないような、芽。
それが、アボカドの実生だという。

りょくけんでも幾度となく、鉢や瓶に種を播いたことがあるので、そういえば見たことのあるような…。

「実生は、ダメなので、やっぱり増やすには接いでます。」との事。

「でも、ここ本当にすごい。なんか、市の天然記念物とかに指定してもらった方が良いですよ!それくらい価値があると思います。」

「そう言ってもらえて、今までやってきて、本当に良かったです。」
頷く娘さん。

「11月の中旬ごろからですかね?」
「はい、その頃、ベーコン、フエルテから収穫していきます。」
「では、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。」

再び車に乗り込み、何度か対向車と譲り合い、集合場所だったコンビニに戻った。

「これから空港ですか?」と娘さん。

まだ、日が明るい。

「いえ、登尾さんに会ってから帰ろうと思います!」
「今から?」
「はい!」

井上さんたちお二人は、私の車が視界から消えるまで、ずっと見送ってくださった。
私は、個人的に天然記念物もののアボカドを見た興奮が冷めやらず。
ハイテンションのまま、有田に向かうのだった。