「すみません、乗り遅れました…!」
「あやあ…!今、どちらにおられます?」
「長崎港…。4分、間に合いませんでした。」
「あやあ…伊王島じゃないとですね。大森社長、どちらにおられるかなと思っていたんですよ。14時の次は17時ですね、今日お帰りになるト?」
「はい、今晩。今から車で伊王島に向かってもフェリーに間に合いませんかね!?」
「長崎市内は渋滞すごいからね、どうやっても無理ですね、ハイ、今回はあきらめましょう、分かりましたよ~」
「そう、すみません、渋滞がすごくて…。」
「あ!9日!”ランタン”※が始まっタねえ。あやあ。それは混んだでしょう。」
島へのフェリーの発着時間は、通勤・通学の関係があるのだろう、朝と夕方以降に集中している。
朝の5時頃から3本、夕方17時以降にも3本。
21時台の便もあるから、けっこう遅くまで対応している。
が、飛行機の発着時間から逆算すると、そのあたりの便はどうも使えない。
東京から最も早い便で9時20分着。
帰りは長崎空港発21時10分が最遅。
長崎空港から、長崎港までは、車で1時間強かかる。
通勤時間帯に合わせたダイヤにはどうも間に合いそうにない。
電車はあまりなく、車で行く場合、渋滞に巻き込まれると、1時間では済まない。
地図とフェリーのダイヤとにらめっこして、スケジュールを思案。
朝一で九州に入り、佐賀の農家さんを訪ねた後、14時20分の長崎港発のフェリーに乗ることにしたのだった。
これならば、14時50分には島に着き、3時間後の18時のフェリーに乗れば、最遅の飛行機に間に合う。
ところが、だ。
長崎港は、長崎市内を横断しなければ辿り着かない場所にあり、信号も交通量も多く、高速道路のICから降りて、わずか4㎞のところまで来ていたのに、14時20分発のフェリーに間に合わなかった。
一大決心をして来た長崎だったのに、悔やみきれない。
集中していた分、ふっと切れたものがあり、港からしばらく外を見た後、臥せって目を閉じた。
長崎県、高島。
西彼半島の先にある島だ。
担当者の方もたまたま長崎本土の方におり、一緒に島に渡る予定だったのに、とんだ迷惑をかけてしまった。
※ランタン=長崎ランタンフェスティバルのこと。毎年2月に行われるお祭り。2024年は2月9日~25日。今期は長崎出身の福山雅治さん、仲里依紗さんもパレードに参加したそう。期間中の来場者は100万人を超えるそう。