松田さんには、金柑の拡販を誓いながら、そこで分かれ、私は次の目的地である指宿に向かった。
指宿には古くからのお取引先である湯ノ口さんがいる。
『大森君。この方に会ってみると良い。スナップエンドウを連続で作ってるから。』
と当時の上司に名刺を渡された。
どこぞの展示会か勉強会で入手した情報だったようだ。
あまり認識されていないかもしれないが、スナップエンドウは、平成生まれの新しい野菜。
ただ、豆野菜なので、一気に生って一気に収穫して、一作が終わってしまう。
なかなか連続して長い期間を栽培している方がいない作物なのだが、湯ノ口さんは秋口から年明け、春先まで連続出荷している。
久しぶりに会うけれど、お元気かな。
薩摩川内からは83㎞ほど。
いよいよ九州本土の南端だ。
山の中の道を抜けて、海岸線に沿った道路に出て、左側に桜島と錦江湾を見ながら、一本道を南下していく。
側道からモクモクと湯けむりが上がっているのを見つけたら、そこは指宿(いぶすき)である。
一本道を右に入り、少し入り組んだ住宅地を何回か曲がると、湯ノ口さんの事務所 兼 選果場に辿り着いた。
前回訪ねたのは2008年。
当時は、いても1~2人だったはずのスタッフさんが、6名ほどいらっしゃり、収穫を終えたソラマメとスナップエンドウの選果や梱包を行っていた。
挨拶すると、奥のご自宅に案内された。
「社長~ りょくけんさんいらっしゃいましたよ~」
色々あって、自宅は事務所になっており、おそらくリビングだった場所には大きくおしゃれなデスクがあり、湯ノ口さんはPCに向かって事務を行っていた。
隔世の感がある。
とは、やや言い過ぎか。
「久しぶりですね。」
電話ではしょっちゅうやり取りをしているのだけれど、お会いするのは本当に久しぶりだ。
湯ノ口さんが東京にいらっしゃった際には、何度かお店にも寄っていただいている。
「いつの間にか僕も髪の毛が無くなり、、、」
「それ、だいぶネタにして強調してますよね。」
なんていう導入から、しばらく農業経営談義をした。
同じような経営理念、同じような悩みを持っているので、事務の方が淹れてくださったコーヒーも美味しく、ちょっと楽しかった。