りょくけん東京

りょくけんだより
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みかん 太陽のしずく

エピローグ ~みかんをつなぎたい~。

明浜を夕方に発ち、飛行機が出発する前に、もう一軒、尋ねたい場所があった。

進路を北に向け、車を走らせた。
携帯電話を鳴らしたが、出なかった。

ご自宅も分かるので、海沿いに車を走らせて、駐車し、ウロウロした。

「確か、このあたり???」

日もすっかり暮れてきた。
少し時間がかかったので、飛行機の出発時間まで二時間ほど。

「えっと…」と覗き込んだら、一人の方が家から出てきた。

私がご挨拶したかった名伯楽 川田さんだった。

「おお~なんだ、おまえ、来とったんか。」
「はい!」

ノンアポだったので、驚かれたの無理はない。

「川田さんに言われた明浜の若手農家に会いに行ってきた、その帰りです!」
「おお~会えたか。なんだ、飯でも食いに行くか? まだそこならやってるやろう。」

ジェットスターという飛行機会社は、時間に厳しい。
出発の30分前にチェックインをしていないと、乗せてくれない。
すでに2回、私には前科がある。

「あ、いや、ご飯はちょっと。雪も降っていましたし。」
「なんや、中の道を通ってきたのか。こっち側の海沿いの道を行けば、雪は大丈夫だし、なん、10分も変わらんぞお。」
「ちょっと待っとけ、着替えて来る、飯行こう。」

自宅に帰られないと、翌朝の四男の保育園の”送り”ができない。
一緒にご飯いって、ゆっくり話をお伺いしたかったが、固辞した。

川田さんには語りつくせない知見がある。

「肥料のこととか、お伝えしても良いですか?」
「おお、あれは良いぞ、糖度が0.5から1度は上がる。わしはもう作りよらんから、教えて良いぞ。」
「太陽のしずくの穂木は譲っていただけないですか?」
「穂木? そうか、、、すぐには用意はできないが、、、」

極早生みかん”太陽のしずく”は川田さんを中心とするグループが見つけたオリジナル品種。
極早生なのに、糖度が上がりやすく、川田さんのところでは糖度13度を超える。

それが、川田さんの技術や畑の力なのか、それとも品種の力なのか、私には判断がつかない。

ただ、川田さんが紡いだ、あの極早生品種を、私はぜひ次世代につなげたい。
明浜の方がひとつひとつの畑の規模が少し小さいが、両者に何とか頼み込んで、栽培にこぎつけたい。

愛媛果試第28号に、甘平、せとかに不知火。
有力な高品質の柑橘は増えているが、それでも核は、みかん。
特に極早生みかんは、最初に出始めるトップバッターなので、重要。
極早生みかんを品質でお客様のハートをつかむことができると、その後、長い柑橘シーズンをずっとお付き合いいただけるからだ。

冷静に言って、川田さんからも、片岡さんたちかも、芳しい返事はいただけなかった。
でも、そこは、消費者と生産者をつなぐ我が社の使命だと考えて、ちょっと頑張りたい。

乞うご期待。

川田さんの自宅と海の間でしばらく話をした後、八幡浜を離れた。
言われた通り、海岸沿いを走ると、雪はなく、高速道路とほぼ変わらない時間で空港に着くことができ、無事に飛行機に乗れたのだった。

またひとつ、利口になった。