“自家不和合性”という言葉がある。
植物において、同じ個体の花粉では受粉せず、結実しない性質の事を言う。
例えば、トマトでいえば、花が咲き、中心にめしべができ、周りにおしべができる。
周りのおしべが、風や蜂によって、めしべに着き=受粉し、やがて結実=実になる。
自家不和合性の植物の場合、別の個体の花の花粉でないと受粉しない。
トマトの方が、結実し種を残しやすいが、遺伝的に多種多様になりづらく、天候の変化などに対応しづらい。
対して、自家不和合の植物は、常に交配して違う性質の遺伝を作り出すので、確実性が低いけれど、できた種が、気候変動などに対応する可能性が大きくなる。
どちらにもメリット、デメリットがあり、結果として、地球上にある被子植物の中で、5割ずつ、自家和合性の植物と自和不和合性の植物があると言われている。
自家不和合性の植物の方が、品種の改良はしやすいわけだ。
自分と同じ性質の花粉では受粉しないからだ。
とうもろこしは、品種改良がしやすい植物として知られ、その一つの要因が自家不和合性の植物だからだ。
同じ茎の頂上部に、手のひらを開いたような雄花ができ、茎の下に、いくつもの雌花をなす。
自分の茎に咲いた雄花の花粉では受粉せず、他の茎の花粉でないと受粉しない。
だから、とうもろこし農家は、種を植えるときに最低二粒は同じところに植える。
二つの茎ができるため、お互いに受粉がしやすくなるからだ。
ちなみに日本の種苗メーカーはこの性質をうまく利用し、世界の品種改良業界をかなりリードしている。
”一代雑種”というやつだ。
F1とも呼ばれる。
優れた親と優れた親を交雑し、優れた子=品種を数多く生み出している。
その種を手に入れれば、かなりの確実性をもって、良い野菜が生産できるわけだ。
が、一方で、種取りはむつかしく、その優れた子の品種のこどもにあたる種は、同じ性質を持たないようになる。
長年、自家採種をしていた農家にとっては、毎年、種を購入する必要が生まれてしまい、種苗会社の継続的な利益に結びついている、とも言える(その前にかなり努力して新品種を生んでいるので、当然と言えば当然なのだが)。
もうひとつ、ちなみに、、、こういった一代雑種の種では日本とオランダが世界をリードしており、固定種ではフランスとイタリアが優れていると言われている。