りょくけん東京

りょくけんだより
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十勝 黒千石

澤山さんご夫妻。

十勝の道は本当に、どこまでもまっすぐで。
黒土の畑がどこまでも広がり。
家畜の牛さんか豚さんのにおいが常にしていて。
人がいなくて。

秋の北海道は寂しいな、とまた思った。

澤山さんのご自宅は、大通りから少し入ったところにあった。
これまた広大な畑の真ん中にぽつんとぽつんと家と倉庫が点在。

私道と思われる道を車でずかずかと進んでいくと、平屋のとってもおしゃれな澤山さんのご自宅に着いた。
手前で、背の高い、若い、イイ男が立っている。

「こんにちは、りょくけんの大森と申しますが、澤山さんですか?」
「はい、妻が中で待ってます、玄関からどうぞ。」

すらりと背が高く、サラサラの髪に、端正な顔立ち。

少し赤くなったカラカラの肌が農家さんっぽい。

澤山さんのご自宅は、北海道の家らしく、雪対策で、まず引き戸のスペースがあり、その奥の、少し高い位置に玄関口があった。
英国っぽい壁紙が素敵な、リビングに案内された。

奥さんも、家の前で出迎えてくれた旦那さんも、若い。
さわやかご夫婦だ。

お目当ての一つであった、極小の黒大豆”黒千石”のお茶を淹れてくださり、1時間くらい話し込んだ。
黒千石(くろせんごく)は、奇跡の大豆、と言って差し支えない。
1980年代には、いったん栽培は絶えていて、収集家が保存していた種を植えて発芽した豆から、今に至っている。
発芽した豆は、なんと、たった28粒。
古い言い方かもしれないが、”BB弾”くらいのサイズの黒大豆で、中は緑に近い。
色素が強く、ゆで汁も染まるし、それをお茶として引用することもできる。
抗アレルギー作用があることが発見されてからは、栽培する方も増えた。

お茶の他、豆ごはんにも好適だ。

「我が家では、お茶はいつもこの黒千石で。お茶を飲んだ後は、この豆もパクパク食べられるんで。」

澤山さんは、特に奥さんが勉強家のようで、有機栽培について、SDGsについて、これからどうやって子供たちに良い食品を残していけるか、良い環境を残していけるか、真剣に考えていらっしゃった。

「トマトで言えば、ゲノム編集トマトが小学校で栽培するようにタダで苗も配られるようになって…。」

「ゲノム編集?遺伝子組み換えですか?」

「違うんです。調べてみてください。」

ご自身で講演もしているそうで、話すのも上手だった。

傍らで、旦那さんが静かに頷いていた。

なんだか、このバランスが良いな、と思った。

澤山さんには、黒千石の他、十勝の名産であるえりも小豆と金時豆、そして、澤山さんのおすすめの極小大豆品種”ゆきしずか”を譲っていただけることになった。

花豆もおつくりになっているのだが、今年の十勝は気温が高すぎて、実があまり入っていないと言う。
虎豆も、パンダ豆もおつくりなのだが、人気なのと、作付け量が少なく、難しかった。

ただ、畑は見せてもらうことができた。

黄土色に、カラカラに乾いた、というか枯れ切ったさやの中から美しい豆が姿を見せると、心躍った。

「ここから、あそこに見える通りまでと、あっちは通りの一つ向こうまで、うちの畑です。48ヘクタールくらいあります。」
「ひゃ~」

1ヘクタールは、100m×100m。

野球場の両翼、スタンドまでがほとんどの球場で100mなので、その、48個分。

少し湿った畑は、真っ黒で、いかにも十勝の畑がずっと広がっていた。
「離れの畑はないんですね。全部、ご自宅の周りに?」
「はい、そうですね、恵まれてますよね。」とはにかむご主人。
「そう、恵まれてるんですよ。本当に感謝です。はい、入植して何代目でしたっけ?」と奥さんも自ら言い聞かせるように繰り返した後、ご主人に再度、水を向けた。
「え。」と戸惑うご主人。
「はい、5代目ですね。」と先に言ってしまった。

なんだか良い。

ほわほわした気持ちになって、澤山さんの畑を後にするのだった。

「このあとは、あれですよね、平農園のほうに行かれるんですよね?」
「はい。」

平農園の娘さんが澤山さん。
澤山さんのご実家に当たる。

さ、次も楽しみだ!