「社長、これなんだと思います?」
銀座店に出勤してきたスタッフさんが黄色の柑橘を手に、そう私に尋ねた。
こぶしより少し小さいくらいで、1/4くらいが少しだけ茶色に変色している。
香りを嗅いで、外観の皮の感じを見た後、
「グレープフルーツですね…!」
「そうですよね!?」
スタッフさんは、その柑橘を世田谷の植樹で見つけ、何なのかずっと気になっていたそうで、今朝がた、たまたま落果していたのを見つけ、店舗に持ってきてくださった。
日本国内でグレープフルーツを作るとやや小玉になる。
水分管理や施肥をせずに放置してあるような植樹であれば、なおさらだ。
ただ、この4月まで木になっていて、落果したものであれば、もしかしたら食味は良いかもしれない。
少しス上がり気味になって水分はないかもしれないけれど。
「食べてみればわかりますよ。」
「食べてみます?」
「食べてみましょう。」
そういうわけでカットしたものを食べてみると、やっぱりそれなりに糖度があって甘みがあり、果肉は固い。
水分はあまりないけれど、食べた後の、ナリンギンの苦みも感じられる。
「グレープフルーツですね。」
「グレープフルーツですね。そしてあながちまずくない。」
スタッフさんのご実家は農家さんで、他の野菜会社で店長経験もあるので、木を見て気になっていたのだそうだ。
「種がこぼれて、育ったんですかね?」
「でも、この近くに、アーモンドも植えてあるんです。」
「へ~。桃の実の小さいやつがなってるんですか?」
「なってるんですよ。」
「じゃあ、好きな方が苗を適当に買って植えたのかもしれないですね。」
「手は入ってなさそうですけど。」
なんだか面白い話だった。