「こないだの台風でね、やっぱりいっぱい落ちちゃったわね。でも、収穫時より前に落ちた実には、何かしら病気があったのよね。」
「弱い実は落ちる。生き残った実が美味しい実。」
同じ山梨のくだもの名人 高橋翁の言葉だ。
「ここはまったくの無農薬。防除してませんから安心してね。」
早速畑に入り両手を使って次々と収穫する塩島さん。
色白で、かわいらしい印象の塩島さんは、一見、農家さんに見えないのだが。
塩島さん |
「僕も~」とまた異口同音の息子3人が、収穫を体験。
長男が潰瘍のかさぶたがついたキウイに気づき、「こういうのも食べられるの?」と私に聞いてきた。
「食べられるよ。植物の病気は人間には移らない。この跡は、風とかでゆすりあってこすりあった跡が、こういう風になる。」
「本当はねえ、誘引するときに、きちんと棚に近づけてしっかりと縛っておけば、あまり動かないで、傷が少なくなるだけどね。」と塩島さん。
「どうしても、ぶどうの作業と重なっちゃって。」
「そういえば、今の時期まで取れてますし、相当な品種、植えてますよね。」
「そう二十種類、いや二十数種類植えてて、もう大変で…!」となんだかうれしそうな塩島さん。
「あ、やわらかいのがあった。これはすぐ食べられるかも!」
収穫中のキウイで熟したものがあったので、渡してくださった。
洗おうか、洗うまいか。
若干、私はおなかが弱い。
皮ごと食べるか食べまいか。
少しの間、キウイを見つめた後ー。
ええい、ままよ、と食べにけり。
「う、うま~い」
皮の違和感は全くない。
もともとレインボーレッドは皮が薄い。
近くで虫を捕まえていた長男がまずやってきて、パクリ。
「うま~い」
聞きつけた次男がまたもパクリ。
「オイシイ。」
そう言った後、自分で手に持ってバクバク食べ始めた。
無言。
果肉が鼻の頭についたことなんぞ、まったく気にせずに、皮もヘタも残さず食べてしまった。
余程美味しかったようである。
食わず嫌いで少々偏食の傾向がある次男がこうも勢いよく食べたのは、親として、りょくけん商品担当として、かなり満足だった。
「ワイルドね~。皮ごと食べちゃうなんて。」と塩島さんがほほ笑む。
帰路に就こうとすると、長男がいない。
「父ーちゃーん」
キウイ畑のすぐわきにも小高い丘=古墳があり、これを長男が見過ごすはずがなく、ほいほいと上っていってしまっていた。
よくこんな勾配を!、と思った。
小学一年生の体力は侮れない。
と思ったら、次男も三男もそれに続いて登ろうとしている。。。
でも登れない。
「なんか穴がある。来て~」と長男。
三男は私が抱きかかえ、次男はもう少し緩やかな斜面を塩島さんが手を握って連れてきてくださった。
「キツネの巣よ。」と塩島さんが穴の正体を教えてくださった。
「え~キツネ!」と興味津々の3人。
「石入れたら出てくるかな。冬眠中かな?」と長男が言うので、
「やめとき!」と注意した。
「こっちにも穴がある~」
そこかしこを駆けずり回り、いつしか気づくと、3人の服には”くっつき虫”的な植物の種がいっぱい。。。
「ちくちくしていたい~。」
―。
かくして、山梨の大塚地区を訪ね、十分すぎるほど楽しませていただいてしまった。
三つ目の目的もあったが、それはまたの機会とすることとし、帰路に就いた。
大月から八王子まで、例のごとく大渋滞ではあったが、本当に楽しい一日だった。