「どうしてそんなに頑張れるんですか?」
大学のテニス部の、ひとつ下の後輩に、そう言われたことがある。
ヒンディー語専攻で、東大にも進学できる実力を持っていたと思うし、事実、卒業した後、東大の法科大学院に進み、現在、弁護士として活躍している。
私は大学に入って、それまでの中途半端なプレースタイルから、ひたすらつないで、相手のミスを待ち、粘り勝つスタイルを確立した。
テニス部というと、華やかな世界が思い浮かぶようだが、そんなことはない。
部内戦で勝って、上位6位までに入らなければレギュラーにはなれないし、大学同士の対抗戦は、ダブルス3本、シングルス6本で勝敗を決する。
いずれも3セットマッチ。
粘り勝つスタイルだったから、試合時間も長い。
午前中のダブルスで2時間、午後のシングルスでも3時間と試合をすることがざらだった。
自分の試合以外ではボールボーイや審判も行う。
ボールボーイは相手校と自校で一人ずつ出し、相手校に拾い負けてはいけないので、全速力でボールも拾いに行く。
真夏の炎天下で、吐いてしまったことも何度かある。
情けないことに、ファイナルセットやタイブレークなどの接戦で、私は勝ったことがない。
卒業して分かったことだが、体力以外に、頭の力も必要で、最後になると頭のほうがバテていた。
現役の時にはそれに気づけなかった。
もっと言えば、ファイナルセットやタイブレークで勝ってないことに気づいたのは、現役を退いてからだった。
21歳。訪ねてきてくれた祖母と大学のコート脇で。 |
りょくけん東京を引き継いで、今年で4年目になる。
昨年の12月ごろから、思えばそんな状態だったかもしれない。
なんとか継続して働き続け、会社を維持しているが、ちゃんと頭を使っていない、というか。
売上を上げる、利益を上げる、そのための策がないまま走り続けていたような。
とりあえず目の前にある、やらなければいけないことを、なんとかこなしていたような。
とにかくいっぱいやることがあるので、その忙しさを理由に、肝心なことをやっていなかったような。
そんな状態であることを教えてくれるのは、たいてい、時間だった。
少し時間が経ってから、ああ、あそこではああすべきだった、と気づくパターン。
もしくは、コーチ。
テニスの試合でも、ベンチコーチはとても大事だった。
この、もうひとつの、”頭”というべき存在は大事だ。
今日、東京商工会議所のご紹介で、新しい中小企業診断士の先生が事務所に来てくださった。
2時間ほどの持ち時間の間、お互いの紹介と会社の沿革を話した後、「一番の課題はなんですか?」と聞かれた。
しばらく考えた後、課題を答えた。
「じゃあ、なんでその一番の課題に取り組んでいないんですか。」
答えは簡単、目の前に、「自分の仕事」と決めていることが多くあり、”やらなくてはいけない”からだ。
「じゃあ、課題に取り組むための時間を作るために、仕事の整理をしましょう。」となった。
業務の棚卸、整理、といったところだ。
実は、社会人になって、幾度となく、第三者から指摘され、この作業を行っている。
心のどこかで気になっているけれど見ないようにしていたことを、再度掘り起こされ、明確にされた。
少しすっきりした日だった。
オシムさんは「走りながら考えろ」とか「考えながら走れ」と言った。
ちょっとそういったことがおろそかになっていたかな。