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”きみひめ” 「あまっ」「うまっ」「ジューシー!」

「どうですか、きみひめの新品種は?」
「それがね~」と切り出す小林さん。

きみひめは、甘さ抜群で、生食もできる有望品種なのだが、大ヒット品種である”ゴールドラッシュ”などに比べて一回り小さいのが弱点だった。
それが、一昨年から、新しいきみひめができて、小林さんの試作を見ても、明らかにサイズが一回り大きかった。
昨年は、ほぼすべての畑を、その新しい
きみひめで作付けをしていた。

「今年は全く無いんですよ。」
「え?」
「ここらへんの農家さんが年でね~。大きいと箱に入んないわ、重くて運べないやらで、種が売れなかったらしくてね。種苗会社さんもがっかりして、今年からもう種苗会社さんがつくってないんですよ。」
「えぇ~、そうなんですか…!」

そういえば、昨年の後半は、とうもろこしが大きくて、箱がパンパンになっていたような…。

大きめのほうが立派でよく販売できるような気もするが、一方で、今の消費者の方は、丸一本食べきれなくなっているのかもしれない。
ピクニックコーンという、これもまた小さい品種があって、ややヒットした。
核家族化で、サイズが小さいほうが受ける傾向もあるのかもしれない。

「じゃあ、皆さん、明日から本格的に収穫に入る畑ですが、今朝見たら十分に大きいので、一本ずつ取ってみて、食べ見てください。」

トルルルル

小林さんの携帯電話が鳴った。

「じゃあ、皆さんに説明して。」と小林さんは麻衣さんに指示を出して、畑を少し離れた。

「えっ」とやや戸惑う麻衣さん。

「まあ、まずは、毛が茶色のものを収穫しましょう。ここが茶色くなっていないものは未熟です。あとは先端を触ってみて、ですかね?」と聞いてみた。

実は、この先端の感じが私もよく分からない。

「そうですね、きみひめは先までよく詰まるんで、触ってみてそこに実があるものが良いです。」と麻衣さん。
なるほど、品種によって先まで実が入るものと入らないものがあるから、よく実態がつかめないのか、と合点がいった。

「あとは腰回りですね。がっしりしているものが良いです。」
「腰回りっていうのは、この一番太い部分のことですか?」とりょくけんスタッフ。
「そうです。この径が太い部分がしっかりしているものが良いです。」
「ふむふむ」と見入るりょくけんスタッフ。
「そして収穫はこう。持ってみて、下げる!」

上に向かってなっているとうもろこしをぐっとつかみ、下に下げるようにすると、思いのほかサクッと収穫できた。

「おお~」とスタッフ一同。

小林さんが戻ってきた。
「生食できますので、そのままぜひ食べてみてください。」

「おお~!」
「あまっ!」
「ジューシー!」

と畑のそこかしこから感嘆の声。

「すご~い。やっぱりとれたての味は違う~。」とは副店長の弁。
「売場に来ているのも十分甘くておいしいけど、やっぱり違いますね!」

収穫したとうもろこしをその場で食べる贅沢ったらない。

半分で良いかな?と思っていたが、バクバク食べてしまった。
◎きみひめ、丸一本食べられます。ハイ。