「さ、じゃあ、お昼を食べて、帰りましょうか!」と音頭を取った。
「山﨑さんすみません、荒木屋さんでしたっけ?この近くですか?」
「あ、荒木屋さんはお休みで、違うところ、”すぎのや”さん、というところを予約しときました。じゃあ、案内するから、付いてきてください。」
コースに入っていない。
変更だけれど、大丈夫かな?と一抹の不安を感じたが、運転手さんに、伝えた。
「すみません、伝えていた荒木屋さんがお休みらしくて、違うところでご飯食べます。良いです?」
「はい、わかりました。」と運転手さん。
ほっとしたけれど、少し田んぼから離れていて、30分ほど移動。
事前に言われていた”13時半の出発時間”がどんどん近づいてくる。
すぎのやさんに着いた時には、すでにほぼ13時だった。
せっかくのお昼ご飯。
せかすわけにもいかず、、、
山﨑さんと美穂さんと別れた。
「いろいろご迷惑をおかけしますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
「今度は、家族全員連れていらっしゃい。」と笑顔の山﨑さん。
「はい、ぜひ!今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。」と握手して別れを告げた。
お店に入ると、奥の部屋に案内されたが、誰もいない。
どうやら、みんな一斉にトイレに行っているようだった。
一人二人と帰ってきて、メニューを選び、注文完了。
「13時半出発、と言われているけれど、ま、ゆっくり食べて。」と中途半端なことを告げた。
が、ちゃんとした(?)料理屋さんなので、料理が出てくるまで、けっこう時間がかかる。
ランチは比較的早かったけれど、それ以外で頼んだ人の料理は、だいぶ遅くなってしまった。
天ぷらもお蕎麦もおいしかったのだけれど、また運転手さんが、想定外のことを言いやしないかと、気になってしまった。
結局、バスに全員が乗り込み、出発を迎えた時間は13時45分。
ドキドキしていると、「大森さん。帰り、トイレ休憩挟まなくても良いですか?」と想定よりも下の言質だった。
ほっとして、「あ、大丈夫ですよ。」と言った後、「あ、みんな、トイレ休憩とらないで大丈夫ですかー?」と後方の座席のスタッフさんに聞いて、「は~い」と割と皆さん真顔で答えてくれた。
「じゃあ、これから東京駅に向かいます。」
バスが再び、のんびりと動き出した。
しばらくすると、今度は子供たちが真っ先に眠りにつく。
気づくと私も含め、全員、眠りについていた。
あ。
首都高に入って思い出したことがひとつあった。
徳之島でいただいた、きび焼酎。
この旅でふるまおうと思っていたのだ。
おもむろにリュックの中から取り出し、寝ているスタッフさんたちを静かに起こして、飲んでもらった。
山﨑さんからいただいたおせんべいをふるまいながら。
きび焼酎は、まるでウイスキー。
ふと目をやると「島のナポレオン」と書いてあった。
「うっわ、寝起きに飲むには向かねーな。」
「甘い!」
「甘いな~ちびちびやるのが、良いかも。」
やがて、静かに首都高速も降り、左手に赤レンガの東京駅が見えてきた。
集合場所だった丸ビルに着き、バスを降りた。
みんな、にこやかに運転手さんにご挨拶。
「ありがとうございました~」
運転手さんも、何もなかったかのように笑顔で、手を振って見送ってくれた。
一時はどうなることかと思ったけれど。
「じゃ、ここで解散しましょう。でも、遠足は、家に帰るまでが遠足。気を付けて帰ってくださいね。」
続けて、
「来年もまたこうしていけるように、きっちり商売していきましょう~」
「は~い!」
昨年の浜松は5~6か所の畑を訪れた。
それに比べれば、物足りなかったかもしれない。
が、これはこれでコンパクトで良かったのかもしれない。
何しろ、みんな、日々の業務でそれなりに疲労を抱えている。
来年はどこに行こうかな。