愛野を離れ、しばらく海岸線を車で走る。
海も畑も本当にどこもきれいで、もし一人であれば、そこかしこで停車して、写真を撮っていたと思う。
少し繁華街に出てきたと思ったら、そこら中の側溝や縦もから煙が出ている。
鹿児島の先端、指宿で見たことがある風景。
小浜温泉という温泉街だということは、すぐに分かった。
すぐそこに海が見える中、同じ視野の中に湯けむりが3~4筋見える風景。
不思議だった。
そこから左手に入り、しばらくは山道。
人気がぐっと少なくなった。
長崎空港から、諫早を通り過ぎて、すぐに愛野がある。
いわば、愛野は島原半島の入り口。
曲がりくねった山道とは対照的に、まっすぐな針葉樹が広がる地域を走った。
愛野を出発して、1時間くらい経っただろうか。
また海が見え始めた。
どうやら、島原半島の反対側に着いたようだ。
海の向こうに見えるのは、熊本県だ。
そこかしこに立つ看板から、布津(ふつ)という地域であることが分かった。
後で調べて分かったことだが、長崎は海岸から海岸まで、15㎞を超える土地がないそうだ。
山道でなく、直線距離であれば、ちょうどその、15㎞弱くらいだったかもしれない。
またメイン道路から脇に入り、細めの道を車で走り、平川さんのご自宅に着いた。
門構えから凄く…。
どう凄いかと言えば、50㎝以上の石で、石垣が組まれているのである。

ほどなくして軽トラで畑ら駆けつけてくれた平川さんに、思わず聞いてしまった。
「凄い石垣ですね…!」
「ここらへんじゃ普通よ。」
ところ変われば…、といったところか。
平川さんは肩幅があり、大柄に見える。
が、並んで歩いてみると、そうでもない。
「まあ、上がってください。お茶でも飲みながら。」
石垣の年代物の門をくぐると、超今時の立派なお家が見えた。
ギャップがある。
広い広いリビングに案内され、話を始めた。
第一声。
「うちのなんかで良いんですかね?」