りょくけん東京

りょくけんだより
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お正月野菜 ゆり根 月光 白銀

ゆり根は、全然一日して成らず。

「食べてみてください。この月光は収穫してもう1か月は貯蔵したんで、けっこう甘いと思いますよ。」

生で食べたゆり根の鱗片は、ホクホクとしゃきしゃきの間のような食感で、水分があり、甘い。
凄く出来の良い安納芋を食べているような。

糖度計を取り出し、測定すると、26度あった。

「あ、もうそんなにありますか。」と伊達さんが、どこかひょうひょうと驚いた。

今まで食べていた白銀も甘くて美味しいと思っていたけれど、月光はそのさらに上を行く。
一般的には、伊達さんのように糖化を進める貯蔵はしないので、農協に出荷するので、味の差も歴然とする。

「みんな、この貯蔵をしないんですよ。だから、月光ももちろん美味しいけれど、うちの白銀も、甘さに切れがあって美味しいですよ。」

奥様が洗浄する場所や、みなしごになった鶏などを見学した後、再び車に乗り込み、畑へ。

たどりついた畑は、ほぼ真四角で、一町、つまり100m×100mはある広い畑だった。
手前は、来年、収穫するためのゆり根で、すでにすべて掘りあげたという。
奥の数列が、まだ収穫が済んでいないゆり根“月光”だった。

月光は“あんこ”と呼ばれる黒い部分が出やすい。
鉄分やカルシウム不足で発生する生理障害で、食べても害にはならないし、むしろ火を通すとポテトチップスのような食感があり、うまいと言う。
忠類という産地で作られていたが、農協が、そのあんこが発生したゆり根は一切引き取らないと決めたことで、栽培されなくなった。
そこで、忠類を飛び出し、帯広に月光の株を持って移住したのが、伊達さんが師と仰ぐ山西さん。

何件かの農家さんの下で働いたけれど、山西さんは、本当に違った。
独立を促され、300株の月光を種として譲り受け、占冠で農家として独立した。

1年目は、譲ってもらった300株が鹿や猪に食べられて途中で全滅。

『余っている株があるから』と途中まで育てていた月光の株を再び譲り受け、1年目を乗り切ったという。

ゆり根は、種の採種から数えると、収穫まで足掛け6年かかる。

小さな、1㎝直径くらいの種芽を植えると、ひょろっとした茎が地上に伸びる。
移しく育つであろうゆりの花の蕾はここで、一つ一つ摘み取る。
地上に種を作る能力を奪われたゆりは、葉っぱで光合成を続け、株に栄養を送り続ける。
秋に、茶色に枯れ果てた茎の下の株は、まだまだ小さいので、ゆり根としては出荷できず、掘り出した後、倉庫で貯蔵。
翌春に再び植えて、また茎を伸ばし、蕾が出来たら、また摘む。
秋まで栄養をため込んだ株は、掘り出し後、再び倉庫で貯蔵。
翌春、倉庫から株を出し、畑に植えて、その年の11月中旬。
ようやく収穫が始まる。

ゆり根の中には、2回目の掘り出しで、十分な大きさになるものもあるが、多くのものは3回目で出荷となる。

「けっこうな重労働なんですけど、人を使わず、一人でだんだんと収穫できるんですよ。重量単価にすると、じゃがいもや玉ねぎに比べると高いので、きっついんですけど、なんとかなるんです。」

伊達さんは自家用以外には、他の野菜を作っていない。
ゆり根一本だ。

「この春、一人社会人に出しましたし。あともう一人です。」
「お父さんは、ゆり根を育てている、農家をやっている、というのが分かって育ちました?」
「ええ。ていうか、私がゆり根を納めているホテルに、就職しましたよ。」
「僕も、4人息子がいまして…。」

その後は少しだけ私の話をさせてもらった。

「ちなみに、ゆり根は“月光”とか“白銀”って言ってますけど、登録はされてないんですよ。昔っから『おらの畑で良いゆり根が出る株を見つけたあ』って言って品種名を名付けてきたんです。」

一つの株=ゆり根を鱗片に分けて植えると1年後には、何倍かになり、株分けされ、品種に成った。
2年後、3年後は、一つに一つしかならないわけだが、その、一粒万倍的な要素が、子孫繁栄の縁起物として、お正月に食べられるようになった由縁だ。

「ちなみに、ここ、熊出ますよね?」
「出ます。あそこ。あの茂みと茂みの間に、こないだもいました。かわいいですよー。
ていうか、あいつら、基本的には人間を怖がっているんで、ちゃんと守るところ守れば、襲ってきません。
占冠どうかなあ。去年も人的な被害は出てないですよ。」

そういって、携帯電話に入っている熊の写真を見せてくれた。

「しかし、大変ですね~」
「はい、はっきり言ってきついです。機械化して、それこそトラクター乗ってがーっと半自動でDVD見ながら農業している方が楽かもしれません。」
「そうなんですね!」
「はい、もう北海道では当たり前になってきています。でも、だからこそ競合の参入が無くて、自分で販売できるんです。自分、大阪人だから、販売機会さえもらえれば、絶対販売しきる自信があるんで。」
「ははっ」
「で、相当、理不尽な部活動をしていたので、どんなことでも、大概の事は耐えられるんで。」

あごひげを蓄え、比較的、薄着。
そういえば、細身だ。
だけれど、情報量も、お話も上手で、スリムなのにとってもパワフルだ。

畑は霧が立ち込め、神秘的。
良い月光と白銀を譲り受けることが出来、寒さでしばらく車の中で凍えていたけれど、ルンルンだった。

伊達さんの、貯蔵して甘さを高めたゆり根。
おすすめですぞ。