「大阪でけっこう強い高校のラグビー部にいたんで、大概の事は大丈夫なんですよ。」
伊達さんの吐く息が白い。
待ち合わせ場所だった、占冠の道の駅で落ち合い、かれこれ30分くらいお話ししている気がする。
新千歳空港から占冠村(しむかっぷむら)まで80kmくらい。
車で1時間15分ほどだった。
私もノルウェー留学の経験がある。
冬のノルウェーは、首都オスロでさえ、日照時間が2時間。
ローフォーテン諸島やオスロ郊外の山の上で、オーロラを待っていた時は、マイナス30度だった。
先日伺った、秋田も寒かったには寒かったかったけれど、ある程度、耐性があると思っている。
が、北海道の内陸に位置する占冠は、30分立ち話をするには、寒かった。

伊達さんは大阪出身。
仕事を辞めて、子どもたちに、親が何をしているのかちゃんと分かる仕事を探した。
有人の誘いで、たまたま北海道で農業を手伝う時があった。
良いと思った。
大阪で資金を貯めて北海道へ一家で移住。
何件かの農家さんで働いた後、師匠と仰ぐ方に出会った。
それが山西さん。
大阪では、ゆり根をけっこう食べる。
茶碗蒸しに必ず入っている。
が、伊達さんも、奥さんも、ゆり根は決して好きではなかった。
山西さんと、ゆり根“月光”に出会い、心が決まった。
『何を仕事にするか、決めたよ。』
『何?』
『ゆり根。』
『え。』
奥さんはその時、持っていたものを落としたらしい。
『良いからこれ食ってみい。』
と、山西さんからもらった月光を奥さんに食べさせて、奥さんも納得したのだとか。
「あ、寒いですよね、すみません、一度、家の倉庫と作業場を見て、畑に移動しましょう。」
11月中旬の北海道は、けっこう着込んでは来たけれど、寒い。
ゆり根は白銀と月光という品種がある。
どちらもセンスのある格好の良い名前だ。
一般的に出回っているのは白銀の方だ。
ご自宅に着くと、すでに収穫し、貯蔵を始めている、月光と白銀を見せてくださった。
「これが白銀。鱗片の付き方が違うんです。」
違う倉庫に案内され、差し出されたのが、月光。