夏の小玉スイカ、秋田夏丸チッチェを覚えていらっしゃるだろうか。
大玉のスイカのラインナップにはけっこう自己満足している。
でも、現代において、趨勢となるべきは、小玉スイカなんじゃなかろうかと思い、良い小玉スイカを探していた。
”良い”というのは、美味しいだけではなく、長く提供してくださる、という意味もある。
というのも、小玉スイカは、収穫の適期が、大玉スイカよりも短く、栽培管理がやや難しいため、1回か2回収穫しておしまい、とする農家さんが多いためだ。
チッチェは、秋田夏丸という大玉スイカの、小玉版で、大玉スイカの特徴をよく継承した小玉スイカだった。
1か月以上の販売期間があり、シャリ感が良い。
そんなチッチェを提供してくれたのは、秋田 横手の斎藤さん。
夏に訪ねた際、もうひとつ、興味を惹かれる野菜を教えてもらった。
それが、冬のハウスで育ったホワイトアスパラガス。
「12月の、クリスマス前にまた来てみな。驚くぞ~。」

ーーーーーーーーーーーーー
あれから半年が経ち、その時期が来た。
12月は、繁忙期で、あれこれと忙しい。
どうしようかと迷っていたところに、一本のメールが入った。
「収穫始まりました。見に来れますか?」
秋田の斎藤さんからである。
行けるのは…。
ー明日しかない。
ということで、新幹線にするか飛行機にするかさっと決めて、ルートを決定。
飛行機を予約した。
幸い、元旅行代理店勤務のスタッフさんから、優待券を頂いていたので、急な予約でも良いレートでチケットが取れた。
朝、5時20分に起き、羽田空港に向かい、秋田空港には9時には着いた。
降雪をある程度覚悟していたけれど、雲は多いものの、晴れ間も見えたので、ほっとした。
レンタカー屋さんによると、降ったり止んだり、みぞれだったりするそうだ。
そこは、自分の、晴れ男である運を信じることにした。
空港から横手までは1時間弱で着いた。
斎藤さんは、冬仕様の格好で、上下そろいの厚手のウィンドブレーカーに身を包んでいた。
当たり前だけれど、夏とだいぶ違う。

「お、来たな。寒いからちょっと中で待ってて。」
午前中の横手は、小雨がサララと降っていて、肌寒いけれど、覚悟していたほどではなかった。
車の温度計は3度を示していた。
実のところ、昨年から真冬のホワイトアスパラガスには挑戦していた。
岩手の農家さんにお声かけしたところ、冬の寒さが足りず、年内出荷はこの温暖化の時代には難しいとのこと。
さらに北に行き、北海道の東神楽の農家さんが年内の出荷を可能にしていて、少しだけ譲ってもらえた。
銀座店で大人気だった初夏の、ホワイトアスパラガスのグリルを、クリスマスに再現したかったからである。
そこで知ったのは、ハウス栽培であっても、アスパラに「冬が来た。」と勘違いさせるに十分な寒い”秋”が必要である、ということ。
中で待っていて、と言われたにもかかわらず、外のお庭をぶらぶらしていた私に、再び斎藤さんが現れ、「まあ、入んなよ。」と事務所に入るよう促してくださった。
着席するなり、
「まずは、これ。これ食べてみて。」

差し出されたのは、細い、穂先から10㎝ほどだけ、きれいにまとめられたホワイトアスパラガスだった。