「おじいちゃんは鼻が良いから。」
母方の、榊原の祖母が祖父の事をそんな風に言っていたことがある。
何かを焼いた香りが、祖母の家に漂っていた。
私にも祖父のそんな血が流れているようで、鼻は効く方だと思っている。
ーというか、どちらかというと、その祖母の一言がきっかけで、その事に気づいたような。
涼しくなり、そこかしこで、金木犀の香りがする。
家の周り。
運動会に訪れた小学校の周り。
早朝の銀座の周り。
事務所の周り。
所用で借りたレンタカーを返し、事務所のすぐ近くにある氷川神社に
・まめ柿がテレビ放映されますように
・りんごのムーンルージュが収穫できますように
とお願いしに行った際にも。
ただ、不思議なことに、香りは感じるのに、どこにあるのかが良く分からない。
神社だから、金木犀の木があるのは不思議ではない。
でもあの小さな黄色の花がどこにあるのかは、けっこう分からなかったりする。
夜。
終電の一つ前に乗れるよう、東京駅の地下に駆け込むと、そこでも金木犀の香りが漂っていた。
いやいや、こんな地下で?
さすがにトイレの芳香剤???
いやいや、そんな情緒のない…。
東京駅は皇居の近くにあり、緑も豊かである。
昨今、芳香剤に金木犀の香りのものはあまり見かけない。
きっと東京駅周辺の植栽だろう。
そう思うことにした。
秋だなあ。