※9月21日から続く
「俺も行ってよい?」と再び関谷さんをレンタカーの助手席に乗せ、小倉さんの軽トラの後を付いて行った。
道路と道路に挟まれた、比較的狭い一画。
ここに、30本ほどの柿の木が植えられており、その1/4くらいがまめ柿だった。
以前、拝見した時には、大きな鉢植えに一本づくりの柿の木が植えてあり、そこにまめ柿が生っていた。
ところが、今や露地で、土に植えてある。
作業効率を上げるために、低く仕立ててあるけれど、十分に大きな柿の木の枝に、びっしりと結実したまめ柿の姿は、以前に見たそれとはかなり違った。
「どう、やっぱり色味がまだでしょう?」
「そうですね。」
暑かったからか、朝からたくさん話を伺ったからか、植えてある柿の品種名を覚えるのに必死だったかか、はたまた。
なんだか私の受け答えは要領を得なかった。
「これが、麗玉。L玉中心で、ちょっと小玉の柿なんだよね。」
麗玉は、シャインマスカットぶどうを育種した農研機構の山田先生が、退職前、最後に育種したもの。
完全甘柿で、ヘタ割れを起こさない柿なんだそうだ。
赤みとツヤが美しく、「美人の柿」だと、先ほど奥様が言っていたっけ。
注目の品種である太秋もあるし、太天もある。
他に、数玉しか正品にならないという”天下布武”も植えてあるそうだ。
西日が差し始めた畑で、興味の尽きない話を小倉さんからずっと聞いていたのだけれど、何やら、小倉さんの携帯が鳴った。
小倉さんがまた、にやっと笑いながら電話に出ると、「はい、はいはい。」と話して切った。
何だろう?と思って、次の言葉を待っていると、「関谷さん。もう待ちきれなくなったみたい。」と笑った。
関谷さんは、久々の外の世界が、暑かったのか、クーラーの効いた車中に留まっていた。
「すみません、お待たせして。」とレンタカーに戻った。
「いやいや、ごめんね、実はこの後、医者に行くんだ。だからちょっともう帰らなくちゃいけなくて。ごめんね。」とニコニコ謝られた。
しょうがないなあという顔をしながら、小倉さんが道路を挟んだ畑から笑ってくださった。
と、そこにもう一台、軽トラがやってきて、小倉さんの前に止まった。
運転席から大きな声で呼ばれた。
「大森社長~!」