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恵那 晩赤

栗好きの栗農家さん3。

「栗の害虫には二つあって…。」と言いかけたところで私がクリタマバチに触れてしまった。

クリタマバチは栗の天敵。
固い鬼皮を越えて栗の果実に卵を産む。
収穫後、ふ化し、果肉を食べた後、大きくなって鬼皮の外に出てくる。
が、仮にお客様の手元に卵が産みつけられた栗が届いた場合には最悪だ。

白くウニウニした幼虫が、栗を切ると中にいるからだ。

私どもも何度かお叱りを受けたことがある。

以前は、これを防ぐために、ポストハーベストが許容されていた。
臭化メチルと言う特効薬で燻蒸される。
強い農協あるいは組織があれば、まとめて燻蒸処理されたようである。
ところが、この臭化メチルは、オゾン層を破壊する、ということで、使用禁止になった。

まあ、そもそも、卵を植え付けられたまま、ふ化しないように栗の中で殺す薬剤なので、
初めて聞いた時、いろいろ疑問に思ったものだ。

数十年に渡り、国の栗の育種目的も、このクリタマバチの耐性を持つことだった。

「岐阜には、どうやらクリタマバチはもういません。」

国の育種機関である農研機構は岐阜にもあり、長い間、そのクリタマバチの耐性を持つ栗の品種を作って来たらしい。
コツコツと植えたことで、岐阜の、あるいは恵那には、クリタマバチはいなくなった。

「あ、そうなんですか!?」

「はい。もう一つはモモノゴマダラメイガで、こいつはまだいます。」

ガの名前は、長いけれど、きちんと系統だっている。

「桃に付く蛾で、ゴマダラ模様があり、昼間に行動する蛾だから、メイガです。逆に夜行性の蛾はヤガと言います。」

夜に動く蛾であれば、別の対策があるそうだが、昼間に動く蛾には、カマキリが有効だそう。
坂元さんは、栗の木の周りの草を残す。

これは、カマキリが住みやすくなるようにしているため。
カマキリの卵を見かけたら、この草むらにすかさず移動させるのだとか。

少し話が落ち着いた時、一本だけ離れたところにある栗の木を差した。

「晩赤(ばんせき)! 晩生中の晩生の栗で、11月とかに採れる栗なんですけど。これがめちゃんこまずい栗で。」

大きくて、香りは良いらしい。

「後で分かったんですが、ぽろたんと同様に追熟型の栗で、年明けかな? 1月ごろに食べると、まあ、美味しくて。でも他にもっと美味しい栗があるから、そこまでしなくても、なんて思ってたら。」

岐阜の農研機構の方が、この畑を訪れて、花を持ち帰ったらしい。
現在、渋皮の剥ける栗は、ぽろたんの他に”ぽろすけ”という品種が生まれた。
ぽろたんは早生種。
ぽろすけは極早生種。
と言うわけで、より晩生に収穫できるぽろたんタイプの渋皮が剥ける栗の育種を、農研機構さんは企図している。
その花粉親として、花を拝借したわけだ。


↑栗の花

「数年後、ぽろすけ、ぽろたんの次の品種が生まれていたら、ぜひ晩赤を思い出してやってください。」

ちょっと面白い。