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ぽろたん 恵那 産地訪問記

栗好きの栗農家。

名古屋駅でレンタカーを借り、高速道路をすっ飛ばした。
ところどころ渋滞もありつつ、大都会を抜け、倉庫街や工業地帯を抜け、山に入った。
しばらくして、恵那のインターで高速道路を降り、笠置山の道路に入った。

ここまで、1時間40分くらいだった。

棚田が広がり、まさに風光明媚。
美しかった。

と、ふと思い出した。
ここじゃない。

アポイントを取った農家さんは、ご自宅のある笠置山ではなく、恵那インター近くの待ち合わせ場所を指定していた。

慌ててメール連絡。
続いて電話連絡。

笠置山の中腹から恵那インター近くまで15分くらい戻った。
信号が現れ、コンビニもあり、何やら活気ある町に入った。

待ち合わせ場所には、それらしい軽トラがあったので、レンタカーを横に着けると、思っていたよりも大柄で、思っていた通り、若い青年期の農家さんがおりてきてくださった。

「大森さんですか?」
「はい、すみません、お待たせしてしまって!」
「ここから5分くらいのところなので、さっそく行きましょうか、車でついてきてください。」

線路を抜け、細い道を抜けていくと、町からさほど遠くないところに、栗畑が広がっていた。

生産者の坂元さんは、以前はサラリーマンをしていた。
恵那の栗きんとんが大好きで、その美味しさを追求していったら、移住して栗農家になっていたという。

栽培する栗は、丹沢、筑波、ぽろたん、利平、岸根、秋峰などなど。
すべてホクホク甘い日本栗(和栗とも言う)だが、大きさやつや、収穫できる時期がそれぞれ違い、おおよそ前述した順番で、9月上旬から収穫が始まる。

私が、ぽろたんが欲しいと相談し、見に行きたいと申し上げたところ、まだ少し早いので、落ちていないだろうという時期ではあった。
まだ日差しが厳しい時期だ。

畑に着くなり、坂元さんの講義が始まった。
おだやかなしゃべり口なのだけれど、その情報量は「写真撮っても良いですか?」の一言が言えないくらい多かった。

・栗の栽培面積1位は茨城で、2位が熊本。この2県が、3位以下を大きく引き離す大産地。岐阜は第4位。
・独特の低樹高栽培という剪定方法で栗を育てる。メリットは収穫や管理がしやすい他、日当たりが良くなる。
  3つの時期があり、1.幼木期、2.前期成木期、3.後期成木期があり、それぞれで剪定の仕方が異なる。
  幼木期は、主枝を太くするように枝を切っていき、成木期は、結果枝という細い枝を太くするように枝を調整する。
  ここに、野菜で言う”切り戻し”みたいな技術もミックスし、太くなった主枝を切って、新しい主枝を育てるようなイメージで結果枝を伸ばすこともあるらしい。
  
「それだけではだめな気もしていて。」

  と、成木の主枝にも、幼木期の剪定方法を取り入れることも最近は試しているそうだ。

「その方が、こう、枝が若くなるような気がして。このあたりがそうなんですけど。」

・農薬も肥料も、堆肥すらも与えていない。

「今はたまたまそうなっているだけかもしれなくて。僕、別に肥料も農薬も使う必要があれば使って良いと思ってるんですよ。」

えてして、化学合成農薬や化学合成肥料を使用していない方は、それが、さも正義で、それ以外は悪だ、絶対認めないというようなスタンスの方が多い。
坂元さんはそうではない、という。

「僕、ここで畑を譲り受けて、初めての年。指示に従って農薬を散布したんですよ。それこそ指導通りに、液がイガから滴るまでしなさい、って言われた通りに。でも、一本やっただけで嫌になって。その後は適当に撒きました。」

その年の、不良果実の割合が11%だった。
翌年は、農薬散布を止めてしまった。
不良果の割合は12%。

「あ、『じゃあ止めて良いんだ』って。」

3年目以降、7年目になる今期も一切の農薬を使用していない。

そして肥料。
2年目は1/3に。
3年目は半分に。
4年目以降は、ゼロにした。
栽培面積が増えたこともあり、単純に比較できないが、栗の大きさは変わらないし、収穫量も栗農家として困らない量が取れているのだと言う。

隣の栗農家さんからも『俺は農薬使用しないから、虫がそっちに行くかもしれないけど、行ったらごめんね。』と言われたそう。

「ていうことは、恵那は、ここは、本当に、栗の栽培に向いている、ていうことかもしれないですね!」
「そう、そうなんですよ。」

シャー、ゴー。

突然、轟音が響いた。
畑のすぐ近くを走る飯田線の電車だった。
私が驚いた顔をしていると、

「あれも大事なんですよ。」

と坂元さんが言う。