「これはクイーンルージュです。どうぞ。」
期待の新品種”クイーンルージュ”は、糖度14度超。
完全に赤く色づいているように見えて、中身はまだ追いついていないようだ。
収穫は、シャインマスカットより遅いか。
売れる売れないとか、美味しい美味しくないとか、そういう議論ではなく、最近の傾向は、種なし、皮ごと食べられる大粒ぶどうが人気だ。
その最たるがシャインマスカット。
樹勢が強く、作りやすい上に酸味がなく糖度が高くて、種なし処理にも向いている。
ご存じの通り、大ヒットしているぶどうである。
ナガノパープルは、それ以前に長野県の育種場で生まれた黒ぶどう。
私は、同じ長野県飯田の原さんからその存在を初めて聞いた。
「育種場で見た”ナガノパープル”。俺は植えれないけれど、風味は何とも言えず良いし、皮ごと食べられるし、これを見たら絶対買った方が良いぞ。」
数年後に松崎さんが作っているのを聞いて歓喜した。
昨年、品種登録から20年が経ち、他県でも栽培ができるようになった。
栽培が難しいので、広がるのか否か…。
先日訪ねた、青森の長谷川さんが育てていたのでびっくりした。
そうして、次に待たれていたのが、赤い皮を持つ、種なし、皮ごと食べられる大粒ぶどうである。
これまた長野の育種場で生まれたのが“クイーンルージュ”だ。
品種が生まれ、登録されたというニュースを聞いて、松崎さんと松崎さんの次女のお婿さん、平林さんに確認したところ、お二人とも植えていると聞いてこれまた、歓喜したし、頼もしく思った。
平林さんも松崎さんのいくつかの畑を譲り受け、独立経営している。
ハウスではなく、少し標高の上がった山の中腹の畑なので、収穫は9月。
本来のぶどうの時期になる。
私が食べた印象は、まさに赤いシャインマスカット。
甘く、長野県が打ち出すキャッチフレーズの通りのお味だった。
ところが、今、畑で食べたクイーンルージュはどうだろう?
ぶどうらしい風味があり、独自色がある。
まだ未熟だからだろうか?
かなり楽しみになった。
「私の娘が好きなのが、クイーンニーナでしてね。熟期は10月かな。今年は力入れていますので、良かったらどうぞ。」
ハウス内に3本だけ、クイーンニーナも植えてあった。
クイーンニーナは、クイーンルージュの前に、赤い皮を持つ種なし&皮ごと食べられる大粒ぶどうとして、大いに期待された品種だ。
ところが、シャインマスカットの成功の陰に隠れて、あまり人気が出ていない。
袋をとって見せてくださった。
まだまだ緑色で、松崎さんはシャインマスカットと勘違い。
「こりゃ収穫は8月末だな。」
「これは赤のクイーンニーナだよ。」
「おお、そうか、それじゃまだずっと先だ。」
もしかすると、松崎さんはクイーンニーナにあまり興味がないのかもしれない。
私が以前、市販されていたクイーンニーナを食べた時も、”ふうん”というくらいで、あまり印象に残っていない。
ただ、ぶどう好きのお孫さんは、クイーンニーナが一番好きだそうで、ご自身が知り合いに頼まれて送る際には、必ずクイーンニーナを入れるのだとか。
時期も食味の特徴も異なるクイーンルージュ(8月20日くらい)とクイーンニーナ(10月)。
どちらも楽しみだ。
色々な話を伺って、時間はあっという間に経った。
野菜くだものも好きだけれど、歴史がとても好きなので、松崎さんたちのお話は、とても興味深かった。
ハウスを離れ、お二人に見送られながら、レンタカーに乗り込み、上田を発った。