黒石の市街を再度抜けて、西に向かい、山の上を目指した。
耳がつまり、標高が上がっているのが分かる。
奥入瀬(おいらせ)や八甲田山に向かう道すがらに、沖揚平(おきあげだいら)と呼ばれる高原がある。
標高が700~900mほどあり、涼しい。
土は赤く、やませと呼ぶ冷たい風が吹くので、夏でも冷涼。
戦中戦後、樺太や朝鮮半島、大陸などに渡った次男坊、三男坊が日本に帰ってきたが、土地がなく、この山に畑を切り開き、住み着いたという。
夏でも冷涼な気候を利用して、レタスなど高原野菜を作っている。
何度か足を運び、レタスを譲っていただけるようになったのが、山田さんだ。
青年海外協力隊で、アフリカのボツワナで、農業指導などもしていた方。
私の出身地である茅ケ崎のすぐ隣、藤沢のご出身で、シンパシーを強く感じる方だ。
事前に畑でお会いしたいと打診してあったが、あいにくご都合が合わず、断念。
それでも、畑は見られないかと、山の上にある社屋にお伺いしたのだ。
山田さんはやり手だ。
レタス、サニーレタス、グリーンリーフレタス、ロメインレタスなどレタス類をメインにして、キャベツも栽培。
秋に向けて、白菜やブロッコリー、じゃがいもも作る。
正社員さんも雇用しているから、冬の収入ができるようにと、そのじゃがいもは雪室貯蔵し、出荷する。
雪室貯蔵したじゃがいもは、でんぷん質が糖分に変わり、とても甘くなる。
奇跡の豆、黒千石豆から作る豆もやしも、注目の野菜だ。
毎年、どこかのテレビ番組で取り上げられている。
海外からの研修生も受け入れているので、社屋の隣にはアパートのような宿泊施設もあり、ウロウロしていたら、どなたかと目が合った。
怪しさ、満点だ。
う~ん何か弁解したい…。
社屋の周りにレタス畑はないかと再度ウロウロ。
そうしているうちに、トラクターが1台、また1台と帰ってきた。
思い切って声を掛けてみる。
「すみません、こちら、山田さんの社屋で間違いないでしょうか?」
「ええ、そうです、ここそうですよ。」
男性が二人、作業を終えて、帰り支度を整えているところだった。
受け答えとか声のトーンが、なんというか、ちゃんとしている。
社会人経験がある、というか。
「すみません、りょくけん東京の大森と申しますが、山田さんはご用事があって今日、会えないのは分かって来たんですが、、、」
「え~~~! りょくけんの大森さん??? 東京から??? わざわざこんな山の中まで!?」
ーちょっと嬉しいリアクション。