桃は、中国原産のくだもの。
ただ、今、日本の方がイメージするような桃ではなかった。
早くに日本に伝わり、今のような日本の桃が生まれたのは岡山県だと言われている。
白桃だ。
その白桃の枝変わりで生まれたのが早生系の白鳳。
バラ科の植物は、自然に新しい性質を持ったものが生まれやすい。
桃も、人為的な交配で生まれたり、自然に生まれたりする。
早生系の白鳳は、白桃に比べて小玉だが、やわらかくジューシー。
糖度も12度くらいと、白桃が15度くらいになるのに比べると低いのだけれど、ジューシーでやわらかいと、
ヒトは甘く感じるそうで、関東の一般的な人にとって、桃のイメージは、こちらの白鳳になった。
白鳳のメインの産地が山梨だったことも、関東のヒトには影響が大きかっただろう。
私どもでも、白鳳系と白桃系の二つの系統で、桃の品質は分かれる、と説明してきた。
・白鳳系
…白桃の枝変わり。早生系で、小玉、糖度は12度くらいだけれど、やわらかくジューシーなので、甘く感じる。
皮がつるんと剥け、一般的な桃のイメージ。
・白桃系
…7月中旬~。大玉で糖度は15度くらい。固めで、収穫後の追熟を経た方が、やわらかく、関東の方には好まれる。
追熟するとつるんと剥けるが、剥けない品種も多い。
これにくわえ、川中島やさくら、紅錦香(くにか)、ゆうぞらなどは、晩生の白桃で、さらに大玉で高糖度だけれど、固い果肉を持つ。
よく「かぶみたいで、甘くない!」とお客様からお叱りを受けるタイプの桃。
だから、私は、従来の二系統に、この晩生の白桃を加え、桃には3系統あると説明するようになった。
ところが!
ここにさらに、ハイブリッド品種が増えてきており…。
つまり、白鳳系と白桃系を掛け合わせたものが増えてきたので、説明が難しくなってきた。
代表的なのは、あかつき。
白鳳と白桃の掛け合わせで、福島のブランド桃として知られる。
こちらは追熟すると、桃らしいやわらかさが出るタイプ。
昨今では、作りやすさや日持ちの良さを重点にして育種が行われている。
あかつきやその枝変わりである暁星と、他の品種を掛け合わせた第三世代の品種も生まれており、なかなか、どれが白鳳で、どれが白桃だとカテゴライズするのが難しくなってきた。
ここのところ、入ってきた”夢桃香”は、その最たるものか。
まだまだ7月の上旬で、白鳳系の早生の時期のはずなのに、固さが特徴の桃だと言う。
名前も紛らわしい。
受け取ったスタッフ4名中4名が”ゆめももか”と呼んでいたが、ただしくは”ゆめとうか”であった。
極早生桃の代表品種である”千代姫”と八幡白鳳を掛け合わせた桃に、早生白鳳の代表品種、日川白鳳を掛け合わせたもの。
おおよそ、その親たちからは想像できないような、しっかりとした果肉を持つ桃だ。
追熟してもさほど、固さが変わらず…。
同じ桃である、ネクタリンのような風味があり、糖度も13度くらいあって、高いのだけれど、果肉が固い。
これこそ、再びお客様からお叱りを受けるのでは…と思われる新品種だった。
現在の気候に合わせ、栽培はしやすいのだろうけれど…。