同じ日の夕方、再び電話すると、昼間よりも声のトーンが良い感じ。
小玉スイカの話で盛り上がる。
「来週、そちらの方向に行くので、突然ですが、行っても良いですか?」
「え、何、こっちに来る~? いいよいいよ、遊びにおいで。たくさん話をしましょう!」
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山形空港から北上し、車で二時間ほど。
思うよりも早く着いた。
「あれ、もう来たの?14時じゃなかったっけ?」
「あ、すみません、思ったよりも早く着いちゃいまして…。」
農家さんの朝は早い。
お昼を済ませた後、13時くらいだと、昼休みをとり、回復のため睡眠をとる方も多い。
緑の壁面を持つおしゃれな家から、年配ではあるが、元気のよさそうな、背の高い方が現れた。
「オレ、どーでも良いんだよね。」
開口一番、どんな文脈なのか、そう言われた。
あからさまに困惑した私の顔を見て、丁寧に説明を紡いでくれた。
「あ、どーでも良いっていうのは、、、『欲しい』と言われれば、どこにでも売るし、送るよ、っていう意味。そこにこだわりはないんだよね。」
少し頭の回転が遅い私は、その言葉の真意は分からなかったけれど、今思えば、「東京で売りますから!」と私が言ったことへの警戒感みたいなものだっただろうか。
日本の首都、東京で売るからなんなの?みたいな。
斎藤さん。
180㎝くらいあるので、165㎝の私にはどうしても威圧感がある。
そこから、段々と、説明していく。
・小玉スイカの連続栽培している方が少ない。
・特徴のある品種を販売したい。
「まあ、畑を見るか。お、そこに、一番遅い畑がある。」
ご自宅のすぐ裏に、作付けが一番遅い畑があった。
「ここが、8月15日くらいからだな。」
軽トラに乗り込み、ワンブロック先の小さめのハウスに到着。
「ここは、失敗作だ。」
と斎藤さんは断言する。
「根の活着を良くする菌を撒いたら、効きすぎてしまって、このありさまだ。」
葉が青々と茂っており、特段失敗には見えない。
「どこが、失敗なんでしょうか? 光合成には葉っぱが必要ですし、良い玉になるんじゃないでしょうか?」
「葉に行き過ぎてしまって、玉が生らなかったんだ。」
繁茂する葉を少し返して、小玉スイカが生っているのを見せてくれた。
1株から6~7玉なるところ、3玉くらいしか結実しなかったらしい。
葉と言うか、株本体が丈夫に育ちすぎたため、子孫を残そうとする=結実があまりされなかった。
「農家としては失敗だな。」
次の、露地の園地を見て、その説明には納得が行った。
小さなかわいらしいスイカがたくさんなっていて、葉っぱと株の間には、隙間がある。
「ここが、だいたい7月20日くらいからの園地だ。3回に分けて植えてある。」
小玉スイカの連続出荷があまりない理由は、大玉スイカと小玉スイカの栽培の両立が難しいこと、
小玉スイカの方が栽培管理は倍かかるのに、単価が、大玉スイカほど高くないことが理由だと説明を受けた。
「『美味しい』と言われて嬉しいから、作っている。でも、まあ、僕はスイカは、小玉だけだからね。」
花に実が付いた日に、棒でマークを付け、積算日数が25~30日の間に収穫するのだと言う。
小玉スイカで、着果管理をしている方はなかなかいない。
少し嬉しくなった。
「チッチェは、シャリ感が良いんだ。糖度は11.5から12度を超えるものもある。大玉スイカの夏丸が小さくなっただけなんだ。」
滞在2時間余。
さといもや冬のホワイトアスパラ、赤坂プリンスホテルに納めていたことなど、たくさんお話を伺った。
「もう少し早く会えてればな。」
最後はそんな言葉もかけてくださった。
斎藤さんの作る、秋田夏丸チッチェ。
“失敗作”というハウスは7/10くらいから。
露地は、7/20くらいだろうか。
楽しみである。