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大根 産地訪問記

尾花沢に、夏の大根農家を訪ねる。

6月の大根が課題だ。

秋から春にかけて、浜松の磯貝さんの大根が、とても安定していて、美味しい。
5月は石川県の大根。
夏は、岐阜の高原や北海道の大根でつなげてきた。

だが、ここのところの暑さで6月の大根が切れ気味。。

岐阜の高原の大根も、当初は6月中旬から始まると言われていたけれど、最近は出ない。
もっと以前は、福島の大根が最盛期の時期だった。

では。

と福島とほぼ同緯度にある山形で、美味しい大根があるのではないかと探した。

そこで出会ったのが、尾花沢の常川さんである。
電話番号を入手し、なんとかつながり、押しかけ気味に訪問した。

出迎えてくださった常川さんは、おおよそ、農家さんっぽくない。
トラックの運転手さんのような…?
ガタイが良く、話すと優しくてしっかりしているけれど、威圧感がある。
耳には、電話のケンウッド製のワイヤレスイヤホンを装着している。
作業や、運転している際、手が離せない時に便利なのではないかと思う。
駐車場には黒のレクサスもある。

なんとなく、風貌と相まって、たぶん、合っている。

常川さんは、雪の下大根も含めると、5月~12月くらいまで、収穫と出荷を行っている。
暑い夏でも、山から吹き下ろす“やませ”のおかげで、気温が上がり過ぎない。

標高は200mくらいしか上がっていないのだけれど、なるほど空港がある東根よりも涼しい。
山に囲まれた地形ながら、広い広い平野も広がっていて、田んぼも多い。

「炭を撒くんですよ。」

なぜ、他の豪雪地帯よりも早く大根を収穫できるのか聞いてみたら、とても意外な答えが返ってきた。
雪を解かすために、黒いものを畑に撒くことで、太陽熱を集め、地表の温度を上げるのだそうだ。
炭を活用することで、雪が解けた後は、畑に漉き込み、土壌のpHを下げる役割も担う。

「すごいアイディアですね!これは常川さんのオリジナル? 特別なんですか?」

「あ、いや、農協やホームセンターで売っています。農業用の資材として、炭が。」

このあたりの地域では普通らしい…。

そんな、肩を張らない常川さんだが、何よりも「美味しい!」と言ってもらうのを目的に大根を作っている。

「先代は、ここいらでは有名な大根農家でしたね。」


↑フレーズは先代が考えたもの。

先代は、規模拡大を繰り返し、5町以上を営む大根農家で、山形では名の通った農家さんだったそう。
そして、その地盤を引き継がせるために、常川さんをスカウト。
常川さんは40歳で初めて農業に従事した。
3年、大根栽培を習った後、先代は急逝。
常川さんが大根栽培を引き継いだ。

1年間だけ、言われた通りの面積を栽培したが、きちんと作るには、その面積や方々に広がる畑を管理するのは不可能と悟った。

今では、約半分の2町弱、40か所の畑に減らし、できるだけ良いものを収穫できるように、方針を切り替えた。

「味の染み方が違いますね。」

他の大根との一番の違いを問うと、そのように答えが返ってきた。
働いていたスタッフさんも
「全然違いますよ。他と。」と重ねた。

品種の研究も余念がなく、種苗メーカーからまだコードネームだけの栽培依頼も受け、試作している。
株間を広めにし、栄養がいきわたるよう、注力。

「砂地のものに比べると、黒ボクなので、肌がやや劣ります。でも肉質が緻密で、味の染み方が違いますよ。」

尾花沢の広い広い盆地で、冷たい風を浴びて育った、初夏の大根。

「僕、あれですよ、畑でかじりついてますもん。生のまま。」

初夏の山形で、野菜農家の矜持を見た気がした。

試食レポートをしておくと、、、
夏の大根なので、やや辛みがある。
甘みを感じた後、例の辛みがやってくる。

加熱すると、果肉がしっかりしていて、うまみというか、大根の味がしっかりする。
包丁の入り具合も、なんだか良い。

生食よりも、煮込みなどが良い大根だ。

■大根 山形県産 1本 540円(税込)
https://www.shop-ryokuken.com/SHOP/331706.html

「ところで、どうして先代と知り合ったんですか?」
「あ、集荷に来ていた運送屋でした。どこかで値踏みをされていたんでしょうね。分かりませんけど!」

屈託のない笑顔が良い。