余市周辺は、取引のある農家さんが多い。
続け様に、森さんを訪ねた。
中野さんの農園からは車で5分くらいのところにある。
中野さん同様、安芸さんからご紹介いただいた農家さん。
安芸さんがりんご栽培を止める時、代わりに、とご紹介いただいた。
安芸さんによると、森家は、くだものどころの余市でも、1番か2番の農園。
それは、栽培面積も、りんごの品質についてもそうだし、歴史とか伝統という意味でも。
森さんで四代目なのだけれど、婿養子で、旧姓は中野。
もっと言えば、トマトの中野さんの先代と森さんのお父さんはご兄弟で、中野社長と森さんはいとこ同士なのだ。
訪ねたのは、12時をちょうど過ぎた頃だった。
12時~13時は、農家さんにとってもお昼ご飯の時間帯であり、この時間帯は避けて、訪問するようにしているのだが、
今回は散々謝罪を入れながら、無理矢理押しかけた。
「そんなに謝んないでください。」と森さんに言われてしまった。
森さんは、奥様と一緒に弘前大学で農学を学んでいる。
数字にとても強く、ちょっと話していても、様々な数字が出てきて、学びになる。
道内の果樹園の団体の副会長だそうで、さらに詳しくなったような。
短い時間でも、分かったことは3点。
・りんごの栽培量は全国的に減っており、高騰が続く。
米の二の舞になる恐れがあり、たくさん報道はされていないが、最大のりんご面積を誇る青森県で、400戸のりんご農家が離農している。
暑くなってきて、栽培が難しくなっていることと、高齢化と後継者がいないのが原因だそう。
栽培する人が減り、当然ながら、りんごの収穫量も劇的に減り、りんごの価格が上がっている。
・高密植栽培で新規参入している企業がある。
りんごの木の株間を狭め、細めに作ることで、樹本体が”死んじゃうかも”と思って子孫を残そうと早めにりんごの果実を生らせる技術。
長野県でよく見かけた方法で、苗木を植えて、翌年から収穫できる。
この方法で、企業が、余市にも土地を買いに来ているらしい。
・森果樹園もりんご以外は、栽培を減らしていくが、跡継ぎはいる!
森さんは、りんご以外に、西洋梨とプルーンも作っているが、だんだんと樹を切り、りんごに集約していくとのこと。
西洋梨やプルーンがある畑は、日当たりや排水が今一つで、りんごに植え替えることもしない。
まだ、中学生だったり小学生だそうだが、もう、今から“跡を継ぐ”とご子息たちが言っているそうだ。
「まあ、僕はどっちでも良いって言ってるんですけど。」と言い放っていたけれど、少し表情は嬉しそうだった。
今年は花芽も多くついており、摘果が大変なのだそう。
「これだけついていたら、これとこれは落とす。この実は、生理落果で自然に落ちるので、僕は放っとく。」
一連の作業を、さーっと教えてくださった。
「ちなみに、森さん。余市でも農家さんが少なくなっているという中で、増毛(ましけ)はどう思われますか?」
「あ~いいんじゃない。増毛。1軒、2軒の農家さんは押さえておくべきだよね~。特にさくらんぼは良いんじゃないかな。
余市も暑いし、山形なんかもっと熱いから、佐藤錦が育てられなくなってきているんでしょ。
全面的に、紅秀峰に切り替える方向らしいじゃんね。」
すごい…!
一を聞いて十くらい教わったような。
「こんにちは~」
13時になり、パートの方たちが、車でいらした。
昼休みが明けてしまった。
もう少しお話を聞きたい気持ちもあったが、お暇することにした。
「じゃあ、今年も、バート(バートレット)からですね。」
「はい、どうぞよろしくお願いいたします。」
少しの時間だったけれど、たくさん話した気がした。
【森さんにお世話になる果実】
西洋梨:バートレット、オーロラ、ブランディーワイン、グランドチャンピオン。
りんご:ひめかみ、昂林、紅の夢
プルーン:ローブドサージェン、ベイラー(昨年はほとんど取れず)