熊本の北の境、南関で育てた肥後グリーンが、農家さんの引退が理由で、無くなってから、5月のメロンが長らくなかった。
思いあぐねて、電話したのが、ナント種苗さん。
スイカやメロンの品種に強い奈良の種苗会社さんだ。
「ナントさんのマリアージュをうまく作っている農家さんをご紹介いただけるような方はいないでしょうか?」
「いますよ、いいのが。」
以前、他の種苗会社さんにそんなお願いをしてみた際には
「周りの他の会社は自分たちで努力して、農家さんを探しているのに、何をそんな楽しようとしてるんですか。教えられないですよ、個人情報ですし。」
と冷たくあしらわれたこともある。
種苗会社に良い農家さんを尋ねてみるのは良策だと元上司から言われていたので、上記のコメントを言われた時には、ショックで、少々トラウマになった。
正直、それ以来か。
種苗会社に農家さんを紹介してくださいと言ったのは久々だった。
ちょうど、代々のメロン農家の息子さんで、ナント種苗さんに修行で働いていた方がおり、地元に戻って、就農したタイミングだったそうで、紹介しやすかったらしい。
それが、津田さん。
日本一愛想のよい農家を目指している。
これは、ナント種苗勤務の際に、会社のテーマが”何かの日本一になりなさい”だったことから影響を受けたからだそう。
熊本の真新しい空港は素敵で、大人気漫画 ONE PIECE の著者 尾田栄一郎氏が出身であることもあり、そこかしこに主人公たちがちりばめられた空港だった。
地震からの復興を手伝う目的もあるだろうし、外資の半導体工場が誘致されたことから、熊本空港の周辺の景気は、良い。
そんな熊本空港から小一時間。
海路口(うじぐち)と読む地域に、津田さんのメロン畑はある。
真っ平らな土地で、水路が多いことから、ここは干拓地だと察した。
ハウスの他、麦畑や田んぼも多いし、ほぼ直角に道が通っている。
自然発生的に生まれた町は、こういう感じではない。
放射状に民家が広がり、細い道がくねくねと町中を走る。
そういう感じではないのだ。
右に曲がり、やや細い道を進むと、津田さんのお家だと思うお屋敷があった。
きれいな女性の方が、軽トラックの荷物を触っていて、通り過ぎた私の車に気づき、会釈してくれた。
それと思ったのに、私は通り過ぎてしまった…。
というのも、道路の両脇に水路が通っており、お屋敷に向かって各個人宅ごとに橋が架かっている感じ。
十分な幅があるのだけれど、ちょっと私には自信がない。
これまでに2回。
レンタカーで側溝に落ちたことがあるからだ。
お屋敷を右に曲がり、できるだけ壁に付けて駐車。
道路にレンタカーを置いていこうと思ったわけだ。
駐車していると、壁の向こうから、ちょこんと顔を出したのが、津田さんだった。
「大森さん、ここです。回ってきていただいて、中にどうぞ。」
そりゃそうだ…。
再びエンジンをかけてまっすぐ進み、切り返せるところを見つけて、踵を返した。
左に曲がり、お屋敷までの橋を大き目に回って庭に入った。