りょくけん東京

りょくけんだより
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にんじん 徳島 春にんじん

春にんじんは、ただいま繁忙期。

高速のインターからほどなく、吉野川沿いの道を少し入った住宅街に、カーナビに指定された場所があった。
真新しい、大きな倉庫があり、ウロウロしていたら、元気そうな女性が軽トラを軽快に運転して倉庫に車のお尻を突っ込んでいる。
場所が間違いないことを確認し、いったん通り過ぎたのだけれど、踵を返して倉庫前に戻った。
なにせ、他にも軽自動車がたくさん停まっている。
収穫最盛期なので、働き手の方が複数いらしているのだろう。
一軒の家に一人、ということはないだろうけれど、電車が不便なところでは、一人一台、車を持っている。

「大森さんですか!?」

軽トラの中から小柄だけれど、元気な女性の方が声を掛けてくださった。

「はい、そうです!」
「黒上です!来たばかりですけど、さっそく圃場の方に行きますか?私、たまたま袋をとりにきたところで、これからすぐ畑に戻るんで!」

ほっかむりに、サングラス、大きなマスク。
女性らしく、日焼けに対して完全防備。
大事だ。
察するに私と同じくらいの齢。

「はい、ぜひ!」
「隣に乗ってください。ちょっとあれですけど。」

そういって、黒上さんの軽トラに乗せてもらった。
新車の臭いがする。

「新車ですね?」
「はい、前のを今年に入ってつぶしちゃって…。」と黒上さんがはにかむ。

車が出発して、1回曲がってすぐ、にんじん畑があった。

「ここが今収穫している畑です。すみません、このまま入っちゃうんですが、大丈夫ですか?」


畑はざくっと見ても1町以上ある。
手前はすでに収穫が終わり、左の奥の方だけトンネルが残り、収穫中のところは、にんじんの葉が青々としてきれいだった。
ドコンドコンドコンッ

平野ではあるが、畑にはアンジュレーションがある。
元々、畝があったであろう場所もある。
黒上さんが運転する軽トラは、起伏をものともせずに進んでいく。
あ、舌を噛むかもと咄嗟に思い、私は話すのを止めた。

収穫している箇所の直前まで来て、黒上さんが軽トラを停めた。

軽トラから降りると、「トラクターの上に乗っているのが社長です。」と紹介された。
軽く会釈をしてくださった後、すぐ方向を変え、トラクターを進めた。

青いトラクターは、にんじんを次々と葉っぱごと引っ張り上げ、収穫していく。

現代農業では機械化がキーワードだ。
初めてにんじん用のトラクターを見て、その収穫される様をまじまじと見て、正直驚いた。
スピード感とその正確性。

青々と茂っているにんじんの長い1mくらいある葉を青いトラクターの左側にあるレール?アーム?が引っ張り上げ、一列びっしりと植えられたにんじんが収穫されるのだ。

一往復したところで、黒上社長がトラクターのエンジンを止め、降りてきてくださった。

「初めまして、りょくけん東京の大森です。」
「あ、黒上です。」

と名刺交換。
やっぱり同年代。
黒上さんご夫婦が中心となって農場経営しているのだ。

「写真、撮って良いですか?」と早速何枚か撮影。

「いやいや、お父さん…。」と奥さんがにんじんを準備。



「…。」

「あ、すみません、1+1は何でしょう?」

(笑)

ー久しぶりにあまりしゃべらない農家さんだぞ…。
あるいは繁忙期に来てしまったから、お怒りなのだろうか???

過去、そういうこともあった。

内心、そう思っているところに、
「この人があまりしゃべらないから、私が、、、本当は私もしゃべれないのに、こうやって頑張ってしゃべるようにしてるんですよ~。」と奥様が説明してくださった。

「社長、ここ剥いといて良いですか?」

ひとつ向こうの畝の周りにいた男性陣がトンネルハウスのビニールを剥ぐという。
これは良い時に来た、と思ってまじまじと見てみた。
ものの5分くらいで、奥行き200mくらいあるビニールを剥いでいった。

「この幅6mのビニールが徳島の春にんじんの特徴で。この6mの幅に4畝植えるんです。」と黒上さんが訥々と話してくださった。
「風も強い地域なので、端っこにはこうやって土をかぶせるようにして埋めて、ビニールをとれないようにしているんですが、こっちの小さい機械で、ビニールを剥ぐ前に取り除いておくんで、ああやってぱっとビニールを剥ぐことができるんです。」と奥様。

ビニールの中にはにんじんの葉っぱも1m以上になって繁茂しているが、他の草たちも勢いがある。

「除草剤は使用しますか?」
「うちは使用します。播種前に1回、播種後に1回。どうしてもにんじんの芽が雑草に負けちゃうから。」

少し残念だったけれど、柑橘とにんじんについては、若干あきらめているところもある。

ご主人と株間などについて話していると、その向こうで奥さんがトラクターの助手席を手前に出して、拭いてくださっている。

「大森さん!」
「はい!」
「ここ、良かったら座って。」
「あ、やっぱり!」

収穫用のトラクターに乗せてもらった。