伊予川という愛媛から流れて来る川が、吉野川に合流する。
それと同じ道を降り、インターから高速道路に乗った。
今度は徳島市方面に向かう。
失礼だが、なぜあんな僻地にもかかわらず、なぜあんなにたくさんの集落があるのか、とても不思議だった。
「だいたい1軒に一人しか住んでないですけどね。」なんて中村さんも言ってたっけ。
後から調べた話だが、平家の落人伝説があるそうだ。
屋島の戦いで敗れた落ち武者たちが、山の中に身を潜めて住んだのが始まりだとか。
合点が行くような行かないような。
そうこうしているうちに、次の訪問地である、藍住(あいずみ)に着いた。
県庁所在地である徳島市に隣接する地域であり、ずっと開けている町だ。
春から初夏にかけて、にんじんは難しい時期になる。
にんじんの旬は、冬だ。
3~5月くらいは、本来ならば暖地と寒冷地の間の端境期になる。
秋冬の産地のにんじんを貯蔵して出荷し、夏は高冷地か北海道に産地を移す。
貯蔵して出荷する場合、湿度と温度を保つことのできる貯蔵庫が必須となる。
3~5月に収穫する場合、10月くらいには播種して、真冬の寒さをしのぐ必要がある。
この栽培体系を確立しているのが、徳島県の春にんじんなのである。
おそらく、量販店を見渡しても、熊本か徳島、静岡産のにんじんに限られるのではないか。
真冬の寒さをしのぐため、小型のビニールハウスでにんじんの畝を覆う方法がとられる。
一番大きなトンネルハウスを使用するのが、徳島の栽培の特徴だ。
以前からそのことは知っていたけれど、なかなかお付き合いいただける農家さんがいなかった。
農協が強かったからだと思う。
時代も進み、個人出荷している方がいらっしゃるのではないかと探してみたわけだ。
にんじんには、もうひとつ課題がある。
それが、除草剤使用の有無。
にんじんは、播種直後から芽がある程度の大きさになるまでの期間は、雑草たちに勝てない。
そのため、多くの農家さんが雑草対策に、播種前と直後の計2回、除草剤散布をする。
永田照喜治さんから、除草剤不使用を言われてきたような、そうでもないような。
著書には、”毛細根”という細かい根を痛めるため、他の農薬には寛容だけれど、除草剤だけはダメだと書いてある。
ーのだけれど、本人の口から聞いたことが無い。
こと、柑橘類とにんじんに関しては、除草剤不使用は難しいようである。
除草剤不使用で始めていたにんじん農家さんも、あきらめて、使用する農家さんが多かったし、
諦めずに作っている方は、その年にならないと、とれるかとれないか分からない不安定なものになっている。
吉野川流域の、この地ではどうなのかな…。