高速道路を通ったような、通らなかったような…。
おそらく、佐賀県を縦断する道路はまだ部分的にしかできておらず、高速道路だと思ってお金も210円支払ったような気もするのだけれど、いつの間にか下道だったり、インターから入ったけれど、お金は払わなかったり、良く分からないうちに浜玉インターを降りて、目的地の近くに辿り着いた。
驚いたのは、ビニールハウスの多さ。
今日日、ハウスを建てる資材の値上がりが激しく、おいそれとビニールハウスを建てることはできない。
それが山にも、河岸にもたくさん連棟が立ち並んでいる。
勉強不足だったが、佐賀県唐津はハウスみかんのメッカだった。
ハウスみかんは、年々減少傾向にある中、唐津と愛知県の蒲郡が、全国的な産地として生き残っている。
川を越えて少し山の中に入ったところに、お目当ての大場さんのハウスに辿り着いた。
前日から連絡を取って返事待ちの状態だったが、私の一方的な都合で押しかけた格好だ。
思った以上に大きな倉庫が軒先にあり、周辺にいくつものハウスを構えている。
全部が大場さんのものではないかもしれないが、それでもハウスの数は本当に多い。
思い切って電話してみると、所用があり、唐津を離れ佐賀市内にいることが分かった。
「すみません、ずっと溜めていたことがあって、佐賀市内にいて、今いないんですよ~ちょっと待っててください。」
しばらくお話した後、スタッフさんが対応してくださるので、現地で待つことになった。
20分ほど待っただろうか、軽自動車がこちらに来て、スタッフの荒木さんともう一人、車から降りてきてくださった。
「すみません~急に!作業中でしたよね!?」
ほぼアポなしで来たことをお詫びしながら、園地を案内してくださることになった。
ありがたい。
にじゅうまること、佐賀果試35号は、大場家では今年が初生りで、まだおすすめではないということを言われた。
樹の成熟とともに、もっと食味が安定してくるだろう、とのことで、こちらはお譲りできないとのこと。
「その代わり”あすみ”がおすすめですよ。」
「あすみ?」
収穫は1月上旬から中旬で終わっており、現在、倉庫で予措中。
でも間もなく出荷になるとのこと。
黄色のカゴに入ったあすみは、せとかのような、甘平のような、いわゆる特徴的なオレンジみかんの姿かたちだった。
「これ、これがちょっとあれなんですが。」
へたの周りの青みが抜けない個体があり、それがあすみの特徴でもあるとのこと。
「でも、この青いものと青が抜けたもので、味にそんなに差がないんですよ。」
倉庫のすぐ裏にあるハウスに向かいながら、そんな話をした。
「あすみは、とにかく裂果が多くて、どれくらい収穫できるのか、毎年、読みづらい品種ですね。でも食味がやっぱり良いです。」
そうやって剪定ばさみで切れ目を入れてくれたあすみを受け取った。
皮が薄く、少しだけ手で剥きづらい。
「食べて良いんですか?」
食べてみると、とてもジューシーでジュース分がとても多い。
じゅわっと口に果汁が広がった後、オレンジのようなみかんのような、良い風味が広がった。
糖度を測ると15.6度。
「良いですね!」と言うと「いや、あすみで15.6度だとちょっと低い方ですね。」と残念そうな表情…。
「20度くらいは平均で行く柑橘なので…。今年はやっぱり出来が悪いのかな…。」
一通り説明を受けた後、にじゅうまること佐賀果試35号については、「自信もって出荷できるまでは。」と丁寧に断られた。
「農家的には、麗紅(れいこう)とあすみがおすすめです。」
「分かりました!」
と畑を後にした。
平均糖度20度の、大場さんの高食味オレンジみかん”あすみ”。
「佐賀にも、いろいろありますよ。」
インターに入る直前、眼下に広がった、唐津の海はとても美しく、はっとした。
川﨑さんが導いてくれたのかもしれない、初めての柑橘。
楽しみだ。
■あすみ 佐賀県産 約1kg 4320円(税込)~
https://www.shop-ryokuken.com/SHOP/415541.html