「よし、じゃあ、いちご狩り行こう。」
「え?ホントに?」
たまの休み。
月に3~4回のお休みなので、私は、正直、四の五の言った。
ただ、最近では、長男は部活動、次男と三男はサッカーの試合が、必ずと言って良いほど土日祝日には入っており、家族6人がそろってお休みになる機会は非常に少ない。
帰りに温泉には入って、疲労回復には努めるものの、いちご狩りの提案には乗ることにした。
毎年、1回は訪ねている山梨の石原農場は、中央高速の甲府南インターからすぐ近く。
かっ飛ばすと二時間ほどで着くこともある。
夏のなすで大変お世話になっている農家さんで、本業は冬の観光いちご園である。
お母様から息子さん、お嫁さん、娘さん、お孫さんまで、大変よくしてもらっており、うちの長男が1歳くらいの時からご存じだ。
初めてお会いした時は、独り者だったし、浜松に住んでいたから、時の流れというのは不思議なものだ。
小曲という地域にあるいちご農園は多数あり、石原さんも何件かある。
私が懇意にしているのは、石原”農場”8番だ。
「いらっしゃい~」と変わらぬ笑顔で出迎えてくださった。
5歳の四男は、お孫さんに当たる大学生のお姉さんをよく覚えており、「〇〇いるか~」と農場に入るなり、口走ったそうな…。
恥ずかしい。
いちご狩りは、コロナ禍を経て、ようやく人が流れてきたそうで、収穫がしやすい高設のハウスは、ほぼいちごが無く、土耕のいちご畑を案内された。
石原さんの高設の畑は、土を大きなプランタのようなものに入れている土耕栽培だけれど、私は離床でない、土耕がやっぱり好きなので、ラッキーだと思った。
植え方がやっぱり面白くて、、、
奥行き60mほどあるハウスの中で、一列を、割り当てられる。
「いろんな品種があって、奥の方は桃の味がするいちごも植えてあるので、それぞれ楽しんでみてください~」とお嫁さん。
入り口付近は、章姫(あきひめ)。
静岡生まれの細長いいちごで、酸味がなく、果肉がやわらかいので、甘みを感じやすい。
ここで、つかみをとっておく感じだ。
少し進むと紅ほっぺややよい姫など、大粒ができやすく、なじみもあって食味の良い品種が並ぶ。
その奥はややマニアックになって、おいCベリーと星の煌めきだった。
やや小粒かもしれないが、酸味と言うか、いちごのフレーバーが濃く、色も少し赤黒いいちごになった。
私が好きなエリアだ。
小さいけれど味が濃い。
農家さんによっては、”黒いちご”と呼んで販売しているところもある。
特に星の煌めきは、地元山梨のメーカーが育種した品種で、私も注目している。
そしてさらに奥の、最後のスペースは、ピーチベリーこと、”桃薫(とうくん)”だ。
知らない人が見れば、未熟のいちごと思うかもしれない。
熟しても、薄い朱色にしかならず、気温が上がってくるにつれて、より白くなる。
というよりも、とてもやわらかい品種なので、そこまで熟させない、と言う方が正しいかもしれない。
そして、どうも、熟度が高くなると、食感が悪く、独特の桃のフレーバーも今一つ響かなくなる。
だから、最適な熟期が、だんだん浅い時期=白っぽい時になるのだろう。
この、発見のあるコースづくりがとても面白い、と思った。
「おなかいっぱいになった?」とハウスから出てきた私に、石原さんがニコニコと語りかけてくださった。
四男がお目当てのお孫さんもバイトから帰ってきて、今度はなんとなく四男は恥ずかしそう。
しばらく、石原さんと仕事の話や、パックに入れてあるいちごの花の話をした。
家族で出かけるのも久しぶりだったし、楽しい時間だった。
温泉にも入り、英気を養い、明日からまた頑張れる。