11時33分。
定刻より3分遅れて、愛媛・中島の大浦港に、フェリーが入った。
お昼の時間にかかるので、気を使わせてはいけない、とフェリー内で売られていた手作りっぽいお弁当を食べ、昼食は済ませてあった。
フェリーを2番目に降り、一番先頭を歩いていると、視線の向こうに、白い軽トラックの前にたたずむ石丸さんが見えた。
しばらく視線を合わせた後、
「石丸さん!」
と叫ぶと、無言でこちらを見て、ニコッと笑みを浮かべてくださった。
なんだか格好良い。
その瞬間、朝から大変だったことがふわっと消えていった。
「お忙しいのに、すみません、今日はよろしくお願いします!」
「いえいえこちらこそ、遠いところ、よく来てくださいました。」
石丸さんとは、お父様の代からお世話になっている。
柔和な話口と物腰は、お父様の代から変わらない。
軽トラックの助手席に乗り込み、港の駐車場を出てすぐの直進の道を進む。
ちょうど、中島の真ん中を走る道路で、ここを走って中島の反対側に行く。
吉木地区と言い、石丸さんのみかん畑が集中している。
道すがら、ネットのかかったカラマンダリン(4~5月収穫するオレンジ色の皮の柑橘)の畑があり、見覚えがある気がしたので、
「今、カラがありましたね。見覚えがあるような気がしましたが、あそこも石丸さんのですか?」
「いやいや、島のこっち側には、私の畑はありません。みんな、反対側にあります。親戚とかあれば、離れた場所の親戚の畑を見ることもありますが、ここらに親族はおりません。」
ヤマト運輸さんのセンターがあり、気になったので、聞いてみた。
「ちなみにヤマト運輸さんとかゆうパックさんで弊社にも中島から運んでもらっていますが、何時に持ち込んでいるんですか?」
「朝の8時ですね、ヤマトさんは。」
「8時ですか!」
フェリーの数は限られることは、今回も思い知らされた。
通勤や通学がある朝と夕方に限られるから、東京の弊社事務所で「17時にまた来てください!」とか「19時に持ち込みますんで!」とかは無いのだろうと思ったけれど、想定外に早い。
「作業の都合もありましてね。山で仕事に行く前に持ち込んで、そのまま山に行くとかね、そういうパターンも多いからもあるんですけどね。やっぱりフェリーの時間帯はありますね。」
ここ、中島から出荷しても、ついこないだまで、翌日の14~16時の間に届いていたのだから、宅配会社さんってすごい。
(現在は、中一日かかる)
「郵便局は、近くに局もあるんで、引き取りに来てくれますけどね。」
少し道が上ったかと思うと、さほど上がらずに、また下り坂になり、島を一周する”幹線道路”に着いた。
海が見える。
左に曲がってからすぐ、側道に軽トラックを停めた。
「ここ、たまみですね!」
畑の位置に見覚えがあった。
先ほどのカラは間違えたが、たまみは、正解。
「そうです、たまみです。」