下世話な話しだが、、、四男は立ってたまま、おしっこがまだできない。
教えたことが、ない。
ましてや外でしたことが、ない。
ーおもらしはあるが。
へっぴり腰だったが、親としての責任を全うするため、付き添った。
さっき、平林さんのご自宅でもトイレをお借りしたような気がしたけれど…。
気を取り直して、再び車で移動。
丘を下って、道路沿いのぶどう畑に着いた。
私が初めてお会いした時は、まだ松崎さん所有のぶどう畑だった。
「ここは道路沿いだから、観光を受け入れていててね。ぶどう狩りの人も来るんだ。」と仰っていたっけ。
奥には松崎さんのりんご畑もあった。
ただ、3種類あったと記憶しているりんごの木が、めっきり減ってしまっているように見えた。
「ここは、人通りもそこそこあるので、夜に人が来るとセンサーが働いて、ライトアップされるようになっています。防犯ですね。最近、盗難も発生しているんで。」
ぶどうの盗難被害は全国ニュースでも挙がってくるほど、そこかしこで発生している。
平林さんは松崎さんからこの畑を譲り受け、そのままぶどう棚を活かして栽培している。
もう少し早い時期に来ると、ハニービーナスも少しだけあったそう。
今は、収穫を待つ”シャインマスカット”がけっこうなっている。
最近、私も購入を検討した非破壊糖度センサーのハンディタイプを片手に、次々とチェックしてくださった。
私が断念したわけは、一台一台がそこそこ高価なのと、”ぶどう用”、”りんご用”、”トマト用”と野菜やくだものによって買い揃えなければならなかったからだ。
「もう少し待ってくれれば、この一列、すごく良い感じのシャインマスカットになりますよ。」
真っ青ではなく、やや黄色みを帯びた果皮の色。
完熟のシャインマスカットは美味しい。
「クイーンルージュは???」
「あ、これですよ。」
ぶどう業界の趨勢は、皮ごと食べられる種なし品種だ。
その代表格がシャインマスカット。
黒いぶどうでは”ナガノパープル”。
(長野県の権利が消えたので、全国で栽培が可能になった。これから少し増えるかもしれない)
そこで、赤い皮の、皮ごと食べられる、種なしの品種の開発が目下の課題になっている。
その候補として、一足先にデビューしているのが、”クインニーナ”。
クインニーナにとって代わろうと長野県が育種したのが、”クイーンルージュ”だ。
”赤いシャインマスカット”と銘打たれて、関東でも少しずつ販売されるようになっている。
ただ、木を見ると、明らかにシャインマスカットよりも細く、弱々しい印象。
実際のぶどうの果実は…?
包んでいる紙を一瞬外して、平林さんが見せてくださった。
「おお~きれい~」
「あげますよ、これ。」
「ええ~良いんですか!?でも、欲しいです!」
注目の品種を目の前にして、大いに盛り上がった。
帰宅後、写真撮影をした後、このぶどうを食べることになるのだが、糖度23度あり、とても美味しかったことを付け加えておく。
私と平林さんがしゃべっている間、大変申しわないことに、四男はずっと奥様と遊んでもらっており…。
具体的には、収穫用の一輪車に乗せてもらい、ぶどう畑を縦横無尽に押してもらっていた…。
「りんごも見ますか?」
「はい!」
ぶどう畑から少し上がったところに、平林さんのりんご畑があり、ふじを中心に植えてあった。
そしてこれまた新品種である”さとあかり”がなっていて、私はそれが見たかった。
外観が抜群に美しい。
赤い色もきれいだし、左右対称に仕上がっている。
「ひとつとってみます?どうぞ。」
りんごの軸と枝がくっついている個所には”離層”があり、そこを横に少しひねるときれいに収穫ができる。
事前の知識があったので、ちょっと上に押し上げた後、横にひねると、バチンと音を立ててりんごが収穫できた。
「ちょっと素人っぽかったですね。」と平林さん。
やべっ
ー致し方ない。
確かに素人なのだから…。
ぶどう畑に戻り、奥様にたっぷり遊んでもらった四男を回収。。
「いやあ。。。あと少しで棒でクモをやっつけるところでした…!」
ぶどう畑にいるクモを、木の棒で倒そうとしていたらしい…。
ー何も言えなかった。
「これから佐久にまだ行かれるんですよね?」
あたりもだんだん暗くなってきた。
息子も私もさんざん楽しんで、上田を離れた。
車から、たくさん手を振って「ありがとうございました~!」とまた二人で叫んだ。