中富良野で玉ねぎの天心を見て、上富良野でピーマンの交渉に行き、来期のトマトの話をしに、下川町まで足を延ばした。
下川町のトマト農家さんのところで、すっかり話し込んでしまい、ご自宅を離れた時は、17時より少し前だった。
北海道の秋は短く、日照時間も短い。
あっという間に日が沈み、あっという間に暗くなった。
車のライトをハイビームにして、道を急いだ。
旭川空港に行く前にどうしても立ち寄りたいところがったからだ。
旭川空港の北、車で1時間くらいのところに、和寒(わっさむ)という場所がある。
かぼちゃの生産量が日本一であるほか、雪中キャベツなどでも有名な地域だ。
ここに、この地域を束ねる青年農家 西川さんがいる。
18時頃、西川さんのご自宅に着くと、あたりは真っ暗だった。
あまり気にしないようにして、携帯電話を鳴らした。
「こんばんは!お久しぶりです! 今、西川さんのご自宅前にいるんですけど、いらっしゃいますか!?」
「あれ、今来ていたの? 自宅にいるので、すぐ出ます。」
真っ暗だったけれど、西川さんが軒先に出てきてくれた。
「誕生日おめでとうございます!」
「あ、ああありがとうございます。」
だいぶ戸惑っていたけれど、はにかむように笑ってくださった。
西川さんとお会いするのも実に10年ぶりくらいだ。
実のところ、朝、旭川空港に着いて、携帯電話の電源を入れた際、一通のSNSメールが届いていたのだ。
「今日は西川さんの誕生日です。」
そう聞いたら、訪ねないわけにいかない。
「ちょっと見てきます?」
手前のハウスの電気をつけてくださると、正直、かなり驚いた。
こんなに暗い中で、ハウスの中の野菜は見ないっすよ、なんて思っていたら、そこにいたのは。。。
羊だった。
西川さんが近寄ると、一斉に羊たちが西川さんの方へ動き、私が少し動くと、私の方にもわーっとやってきた。
エサがもらえると思ったのだろう。
北海道はジンギスカンが有名で、羊肉の需要が高い。
また、昨今の健康ブームで、国産ラム肉の需要が非常に高まっているのだという。
そういえば、そんな話を聞いていたっけ。
「ちょうとタイミングが良かったんだよね。ずっとやりたかったんだけど。欲しくても、羊が手に入らなくて。
コロナでやっと”買ってくれ買ってくれ~”ってなって。今年で3年目。やっと今年出荷できるの。
それまではエサ代で持ち出しばっかりだったけど。」
「へえ~」
「今は人気があって、和牛よりも高いって。」
西川さんはひょうひょうとしているけれど、北海道大学の経済学部を出ているインテリ。
農業の次の策もずっと考えていたのだろう。
「娘も、帯広の畜産大学に通っててね。」
二つのことにびっくり。
あんなに小さかったのに、もう大学生。。。
そして、畜産!
「りょくけんはやらないの、肉?」
「何度か議題に挙がったことはあるんですが、、、やりません!業際(ぎょうさい)っていうのがあると思っていて。うちは野菜とたまごだけでやっていきます!」
上着を忘れてきていた私はすっかり寒くなり、、、
ミニトマトジュースやミニトマト、ミディトマトを食べさせてもらい、再び車に乗った。
「空港20時発くらいのに、また乗るの?」
「あ、はい、その通りです。」
「ここから1時間あれば、間に合うから。」
少しだけ無理したけれど、情報交換もできてとても有意義な時間だった。
相変わらず、面白い。
はい、とは言ったけれど、実は19時半発の飛行機。
再度、車を飛ばした。
そうそう、道すがら、何か大きな犬がいると思ったら、キツネが側道にいた。
息子たちがいたら、感嘆していただろうなあ、、、
最後まで出会いと情報にあふれた一日だった。