「あっちはにんじん。ここは(グランド)ペチカと、インカも植えたかネ。あっちは玉ねぎとにんにく。こんな大きくなるにんにくも植えたんだよ。無臭ニンニクっていうのかな。」
「赤い玉ねぎは植えなかったんですか?」
「そうだね、腰を痛めて植えなかったけど、じゃあ秋に向けて植えようね。」
「え?良いんですか?」
「いいよぉ、いつも植えてるんだし。」
アブラナ系の畑には、所狭しと、アレッタやプチヴェール、キャベツ、ブロッコリーも植えてあり、いずれも―花盛りだった。
「これは、ちょっと定植が遅れたやつでね。」
と残っていたアレッタをパキパキと、収穫してくれた。
その、手際の良さと言ったら!
「食べても良いですか?」
「ああ、良いよォ。」
アレッタもプチヴェールも茎は多少固いのかもしれないが、甘みがあり、まだまだ美味しい。
「せっかく来たから、これは持って行ってね。」
ー優しい。。。
収穫してあったゆずとアレッタをいただいた。
「あ、今日は暑いから、これ、飲んで。」
ペットボトルの飲み物をいただいてしまった。
雨予報の日だったが、すっかり晴れて、なかなか気温の高い日だった。
90歳だという曾祖母がよっこいしょ、といらして、引っ込んだ。
「草取りしようと思ったのかな? おばあちゃん、良いよ~」と松井さんが声をかけたけれどそのまま家にお戻りになった。
お孫さんが車で、弟さんを乗せて帰ってきた。
ご主人と松井さんに見送られて、お屋敷を離れた。
―離れた、というか、、、道を横切って、そのまままっすぐ進んだところが、次の訪問地だった。
鈴木さん。
車を降りるとすぐに納屋があり、そこでちゃきちゃきと長ねぎを束ねていた。
「あ、東京りょくけんさん!? わざわざ遠くから!? 東京から来たの!? いやまあご苦労様~。」
おばあちゃまには違いないが、松井さんとはまたちょっと違う感じ。
やけに声がきれいだ。
「お声がきれいですね。」
「あ、畑、見に行く?」
「え、あ、はい!」