山を下りて川沿いを走って磐田市の中央部分まで南下してきたはずなのだけれど、再度、山の上に向かった。
磐田は、南北に長く、天竜川と磐田原台地に挟まれた地形。
南北に走る幹線道路を走ると、南下する場合は、右手に川、左手に山が必ず見え、北上する場合はその逆で右手に山、左手に川が見える。
川を越えれば超巨大な浜松市だし、山を越えると森町だったり、袋井市だったり、掛川市だったりする。
台地は地盤が良いのか、戦略的な山城がいくつかあったようだし、それ以前のものとしても、古墳や遺跡も多数存在する。
再び上った磐田原台地の畑には、道を挟んで、二件の農家さんのお宅があった。
まずは、松井さん。
この冬から春にかけて、私が一番気に入った野菜、アレッタを育ててくださった方だ。
敷地内に入ると、先ず迎えてくださったのは、松井さんのお母様だった。
90歳を超えても、畑に入り、誰よりも早く雑草を取ってくださるのだそうだ。
奥から、松井さんご夫妻が笑顔で出迎えてくださった。
「ちょっとね、孫を迎えに行かなくちゃいけなくてね。でも、孫が迎えにもう行ってくれたから。」と奥様。
ご主人は笑顔を崩さない。
家族構成を理解するのに少し時間がかかったが、四世代、9人が一緒に住んでいるそうだ。
最初に出迎えてくださった90歳の曾祖母、松井さんご夫妻、息子さん夫婦、そしてその息子さん(孫)が4人。
お孫さんは一番上の方はすでに成人して働きに出ている。
”孫が孫を迎えに行っている”と言われて、ピンとこなかったけれど、一番上のお孫さんがまだ学生の弟さんを迎えに行った、ということだった。
ご自宅の裏には、畑が開けており、アブラナ科の野菜がいっぱいあったのだろう、黄色の菜の花が美しく咲き誇っていた。
松井さんが一手に管理している。
笑顔を絶やさないご主人は、実は事故に遭って、命も危ぶまれた状態だったそう。
良いお医者さんに出会い、リハビリをして、自分で立ち、トラクターを動かすまで回復した。
そこに、ものすごいドラマがあっただろうことは、想像に難くない。
私が気に入った野菜”アレッタ”は、ケールとブロッコリーの掛け合わせ。
花蕾も美味しいし、茎も美味しいけれど、葉っぱが美味しいと思った。
一か月も続かなかったのが残念だったのだけれど、それにもわけがあった。
「実は12月に、私が腰を痛めちゃってねえ。畑を管理できない時期があったの。今は、もうまあ、なんとかね。」と松井さんが笑う。
苦労を微塵も見せずに、ずっとにこにこ。
小柄な、かわいらしいおばあちゃま。