お会いしたかったのは、もう20年以上も、じゃがいもを作ってもらっている廣田さん。
実のところ、ここ数年、体調を崩すことが多かった。
そして、検診に引っかかったとかで、大きな病院で、入院検査を受診した。
ちょうど、じゃがいもの収穫と選別を行う時期で、何度かスケジュールを確認しあった中で、
「いや実はね、」と話があった。
入院検査の結果は聞けなかった。
「癌の疑いがある、って言われてね。」
あれから2か月。
11月になって、北海道にまだ雪が降らないのは、きっと私に「北海道に行け。」と言っているのだと思ったのだ。
車で、廣田さんのご自宅に着くと、外まで出迎えてくださった。
「いや実はね、僕からも大森さんに連絡をしなきゃと思っていたところだったんですよ。」
肌寒い秋の北海道だったけれど、部屋の中は煙突の着いたストーブが炊かれ、ぐっと暖かかった。
奥さんと二人。
テーブルを境に、話した。
「浅川さんがね、農業引退するっていうから、じゃがいもの他に、僕がかぼちゃのダークホースを作ろうかな、なんて言ってたんだけどさ。」
廣田さんの自宅の隣(と言っても、200mは離れているけれど。)に、浅川さんのご自宅と畑があり、大人気のかぼちゃを作り続けていただいていた。
が、浅川さんは今年で引退を決めたのだ。
「2,3日前にさ、売りに出したのさ…、畑も田んぼも。だから、連絡しなきゃ、と思ってたら、来てるっていうから、びっくりして…。」