前日でも、見学を受け入れてくださる田んぼの持ち主。。。
農家さんは、専門が他の作物だったとしても、水田を持ち、米を栽培している方は多い。
近郊で、誰か…。
そう考えた後、そういえば、黒田さんがいることを思いついた。
連絡すると、「どうぞ~お気兼ねなく~」と久しぶりの連絡にも関わらず、返事をくれた。
有難い。
黒田さんは、学生時代、りょくけん松屋銀座店がオープンした直後にアルバイトしていた。
紆余曲折を経て、長野の佐久に移住し、現在、米農家として、かなり立派にやっている。
もう、10年は経つ。
その間に、結婚もし、お子さんも生まれている。
やっちゃん だったっけな。
女の子だけれど、うちの男子とも、歳が近いので、きっとうまくやれるだろう。
翌朝、家族で長野の佐久に向かった。
長野の中では、関東寄りで、かなり近いつもりだったが、長野は長野なので、3時間弱かかった。
思い描いていた時間通りにはつかなかったけれど、午後2時、ようやく黒田さんの家に着いた。
「久しぶり~!」
学生のころと変わらない感じでもあり、がっしりした体躯にもなっていた。
昔から筋肉質だったけれど、背中が、妙に強い。
佐久は、市川五郎兵衛という中世の武士が、浅間山と蓼科の山間の平野を開墾し、さらに用水を引っ張ってきたことで、長野有数の田園地帯となった。
その功績は400年以上経った今も語り継がれており、徳川家康の用水引水の許可の書状なども、記念館に残されていた。
この地から産出されるお米は”五郎兵衛米”と称され、ブランド米として流通しているのだ。
黒田さんが作るのはすべてコシヒカリ。
10年経ち、今では52か所に水田を持つ立派な農家だ。
コンバインも、トラクターも有しているのだから、きちんとしている。
「ほら、ちゃんと目的を言いな!」
「総合学習の授業で、稲を育てていて、テーマを決めて、レポートを書くので、田んぼを見学したかったんです。」
「違うだろ、タガメをつかまえたいんだろっ」と茶化すと、にこっと長男は笑った。
「タガメ?タガメかあ。。。実は今、田んぼに水が無いんですよね。ちょうど。」
「え?」