お正月野菜のひとつに、ゆりねがある。
文字通り、ユリの花の根にあたるのだが、厳密には、じゃがいもと同様、地下茎が肥大したものだ。
漢字で書くと、百合根と書くのは、にんにくに良く似た外観で、白い鱗片が幾重に重なっていることから。
和合を意味し、また、子孫繁栄を祈願してお正月に食べられるようになった。
そのほかにも、霊的な力を有し、天井の扉を開ける、と信じられていたため、「無病息災」の意味合いもあったと言う。
栄養価的にも優れていて、たんぱく質も含むし、カリウムはもちろん、鉄、リンも含まれ、コレステロール上昇を抑えるグルコマンナンも含まれたり。
漢方薬として咳止めにも使われているようで、何かとありがたい食品なのである。
とっつきにくい野菜に見えるが、丸ごとホイル焼きにしても美味しいし、ほぐしてカレーに入れたって良い。
じゃがいもと同じような調理方法で、気軽に食べることができる。
火が通るのが早いので、じゃがいもの1/4くらいの調理時間を目安に、ホクホクした食感を残しつつ使いたい。
ちなみに、昔のゆりねは、苦みが強かったようだが、最近のものは食用の品種「白銀」が定着して、ほぼ苦みがないので、なおさら食べやすくなった。
ただし。
お店で販売しているような立派なものになるためには、じつは6年もの年月が必要なことはあまり知られていない。
・1年目…ゆりの地上の茎に「むかご」と呼ばれる実がなり、その実を収穫して、土に植える。
植えてから1年では十分な大きさにならない。
・2年目…栄養分を吸い切ってしまうためか、次の年は別の場所に植え替える。
・3年目…十分な大きさになった種を再度、土に植える。
・4年目…すくすくと茎がなり、花芽を付けたところで、花は切る。
中央、ゆりの花芽は切って芯止め。 |
栄養分が花に行かないように調整し、地下茎に持っていくためである。
・5年目…植え替え後の1年目はとらない。
・6年目…植え替え後、2年目になってようやく十分な大きさになるので、収穫する。
こうして、初めて出荷される。
この、足掛け6年を要するためか、広大な土地を有する北海道が、日本の生産量のほぼ100%を担っている。
りょくけんも同様で、トマト農家さんのツテを伝って、ニセコ町の増原さんを紹介してもらい、毎年、譲ってもらっている。
増原さん。 |
ニセコ町は、スキー場でも有名だが、実はじゃがいもでも有名な土地柄。
赤土土壌が、じゃがいもを美味くさせるのだ。
ホクホク感が大事なゆりねも、そんな土地柄が合致したのだろう、ゆりねの名産地となっている。
私が訪れたときには、蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山が、夕暮れの中で、ものの見事に赤く染まった。
ニセコの住人である増原さんをして「こんなの初めて見た。」と言わしめるほど、美しかった。
何か、運命めいたものを感じたのは、少し大袈裟か。
赤く染まった羊蹄山(ようていざん)。 |
そんなわけで、大概の農産物が安価に手に入る北海道でも、ゆりねは高価。
ただ、食文化には根付いているようで、お正月の煮物というよりは、大衆的に、ポテトサラダに入れ込んだり、前述したように、カレーに入れたりして親しまれている。
冬が長い北海道において、貯蔵性の良いゆりねは、庶民的な食べ物として根付いているのかもしれない。
ホクホク、あまい。
”有難い”野菜、北海道のゆりね。
ぜひ手に取ってみてほしい。
■ゆりね 北海道 1株 432円(税込)