「母親の調子が悪いので、一度、顔を見せに来い。」
父親からそんな電話をもらったので、久し振りに帰郷した。
結婚して、子ども生まれ。
単身、電車に乗って辻堂に向かうのは、何年ぶりだろう、と自問するくらい久し振りだった。
息子たちを保育園に送り、いったん店によって、書類を渡し、有楽町駅からJRに乗った。
途中、交通会館のマルシェで、”こみつ”こと高徳(こうとく)が売っていたので、手土産に購入した。
「お兄さん、このりんご知ってるの? うちの集落でも作っている人は少ない、最新の品種だよ!」
とおじさんが言うので
「あ、はい知ってます。でも最新の品種ではないですよ。」
あ、いけない。それ以上はやめようと思って、だまってお金を払った。
こみつは、JA津軽みらいの商標で、高徳の中でも特に蜜がいっぱい入っているものに、その名を許されている。
高徳は、大きくならず、蜜がよく入ることで知られ、味も良い。
蜜が入ったものは果肉の8割くらいに蜜が入り、食味もすごく良いのだけれど、日持ちが悪い。
冷蔵庫に入れていても4~5日で果肉がもさっとしてしまう。
「このりんごもつけておくので食べてね。」
おばさんが、輸送途中で押されてしまったのだろう、青い、シナノゴールドもつけてくれた。
品川駅から東海道線に乗り換え、電車に揺られること1時間。
こんなに揺れたっけな?と思うほど、ガタガタと揺れる中で、膝の上にノートパソコンを広げながらカチャカチャと仕事をした。
電波も今一つで、あまり仕事にならなかった。
発展目覚ましいとは聞いていたが、辻堂駅は様変わりしていた。
北口にはソニーやカントックという会社の工場があったような気がするが、きれいなショッピングモールとマンションが立ち並び、西口の改札は、あんなに寂しさが漂うような建造物だったのに、とてもきれいになっていてびっくりした。
変わらないのは富士山だろうか。
東海道線の向こう側に、大きな富士山がきれいに見えて、そういえば、そうだった、なんて思い出した。