トゥルルルル
銀座店で働いていると電話が鳴った。
松屋銀座の交換台から外線の案内だった。
「男性、年配のっ」
いつもは丁寧なのに、やけに荒っぽい。
「なんだろう?」と思って電話に出ると、その答えはすぐに分かった。
「もしもーし」
「あ、川田さん!」
川田さん。 |
愛媛日の丸のみかん農家、川田さんからだった。
伊予弁がキツイので、関東の方には聞き取りにくかったことだろう。
交換台の、品行方正な女性の方が珍しく、荒っぽかったのは、方言が今一つ理解できなかったからだと分かった。
「大森社長よ、まだ早いぞー。10月2日なんて発注ファックス見たけんど、まだ早いぞー。もうちょっと待ってくれやアー」
独特の伊予弁のイントネーションがどこまで、文字で表現できているか…。
内容は、10月2日着で発注していたみかんが、まだもう少しかかる、ということだった。
みかんの甘さと着色には太陽とともに、寒さが必要。
「冷え込んできとーから、もう少しだがな、2日(着)は早い。」
「はい、じゃあ待ってます!」
「今日にでも糖度と酸度をまた測ってみよーわい。12度くらいにはなっておろう。ただ、まだ緑だけん。三部付きで良かろう?」
糖度は上がってきているけれど、外観がまだ緑だから、もう少し、三割方、橙色になったほうがよいだろう、とのことだった。
10月10日くらいかな。
9月の、中旬くらいに聞いた時には月末には収穫するかもしれない、と言うことだったけれど、少し寒さが来るのが遅かったか。
ここにきて、イノシシの害が増えているらしい。
「何かブーブー聞こえるな思ったら、目の前におるんよ。小さい、こまいのも連れての、『シーッシーッ』と追い払ったわい。」
イノシシって追い払えるのか…。
突っ込んできそうだが…。
何にせよ、みかん。
楽しみである。
川田さんの極早生みかん”太陽の雫”の園地。海のすぐそばにある。 |