小倉さんと関谷さんとしばらく話した後、「そうだ、見といたほうが良いよ。」と関谷さんに促され、小倉さんのご自宅に向かった。
「いろいろ諸説はあると思うんだけどねえ。」と社内で事前レクチャーを受けた。
15分くらいで、小倉さんのご自宅の着き、その正面にある大きな柿の木に案内された。
原木富有柿。瑞穂市の天然記念物に指定されている。 |
「これが富有柿の原木。」と関谷さん。
「え!」と素直に驚いた。
ご自宅にいったん戻っていた小倉さんが、そこにやって来て、話し始めてくれた。
「爺さんの爺さんに当たる時かな。
居倉御所柿(いくらごしょがき)っていう品質の良い柿があって。
居倉っていうのは、この先にある神社の周辺の地名なんだけど、その枝を挿して植わってた樹がいったん枯れて、その根の一部からまた生えてきたのが、この樹らしいんだよね。
それが大きくなって、できた実が、御所柿よりもさらに品質が良いって言うことで、”富有柿”って名付けられてね。
評判が出て、全国に枝木が配られて、育てられるようになったらしいよ。」
「そう、小倉さんは、代々の柿農家の名家なんだよ。柿の御曹司。」と関谷さん。
黙って笑う小倉さん。
「でもねえ、樹齢も100年とか160年とか言われてね、さすがに樹勢が落ちてきて、去年だったかな。
もうだめだ、っていう時に、いろんな先生方がやってきてね。
なんとか樹勢を回復させてここまで来たんだ。
市のね、天然記念物に指定してるからね。
『枯らすわけにいかん。』ってね。
一応、うちが管理を任せられてるし、収穫するのも僕なんですけどね。」
「え、これ収穫して良いんですか?」
「ええ。毎年、そうだね、150玉くらいかな。生りはもうあんまりよくないけど。」
「え、販売もして良いんですか? 美味しいんですか?」
矢継ぎ早に質問する私。
「販売? 販売もしてるよ。美味しいか、って言われると、そうだね、普通の富有柿よりもちょっと美味しいかな? っていう感じかな。」
「へえ~。」
「普通の富有柿よりも、御所柿にやっぱり近くてね。少し甲高っていうか。」
樹齢160年とするか100年とするかは、その、いったん枯れた根から生えた時から数えると100年で、枯れる前の母木から数えると160年、となるらしい。
その、柿の価値は特筆に値する。
だって、天然記念物の柿だ。
コメダのコーヒーで、一休みして、ひとしきり話をした後、岐阜を後にした。
少しややこしいのだけれど、関谷さんは本巣市、小倉さんは瑞穂市。
隣接するが、違う市に属している。
平成の大合併で、~郡だったものが市にそれぞれなったのだとか。
天然記念物の柿は、当時の私の上司がいたく気に入って、販売もした。
だが、ここ2年、カメムシの害がひどく、一玉も出荷できなかった。
原木の富有柿 |
2020年はどうかなあ。
日本古来のくだもの。
これからも大事にしていきたい。