関谷さんの白いクラウンに乗せてもらい、会社の話をしながら、別の圃場に辿り着いた。
畑は真四角で、周囲を水色のネットで囲っている。
「いるかなあ? いないなあ。ちょっと電話してみる。」
ほどなくして、柔和な笑顔の格好の良い方が姿を現した。
年頃は、関谷さんと同じくらいだろうか。
小倉さん。 |
「どうも~。突然どうしたの?」と、私と関谷さんのところに向かってくる。
「浜松からお客さんがいらしてね、ちょっと紹介しようと思って。」と関谷さん。
「へえ~わざわざ浜松からですか。私もサラリーマンをしていたので、浜松にはよく行ってましたよ。」
「こちら、小倉さん。僕なんかよりもずっと頑張ってる方だから。」と関谷さんから紹介を受けた。
「どうも、小倉です。でも、なんでこちらへ? 浜松なら次郎柿があるじゃないですか。」
確かに、浜松と言えば、次郎柿だ。
「あ、いえ、陽豊柿を探しに来てまして。」
「へえ~陽豊を。陽豊もたしかに良い柿ですよね。」と小倉さん。
「僕は富有と、そのほかに、太秋柿と早秋柿を作ってましてね。この、太秋っていうのが面白いと思ってるんですよ。」
察するに、営業マンだったのだろう。
笑顔を交えながら、トークが上手だ。
そして、園地が素晴らしかった。
関谷さんの言葉はもちろん謙遜もあるだろうが、小倉さんが、かなり畑に手を入れて頑張っている農家さんであることは、一目で分かった。