「陽豊柿をここらへんで作っている方をご存じでないですか?」
「よーほー柿?知らんね~。」
「そうですか…。」
何人に聞いた後、「大きな鉢植えで作っているらしいんですが…。」
「おお!鉢植え!おるおる。あっちのほうで、そういう畑があるぞ。行ってみい。」
言われた方向に行くと、あった!
冬のまだ寒い時だったので、柿はなっていない。 |
1mくらいの黒い鉢植えだったと思われるところに、まだ小さい柿の木が植えてあった。
誰かに質問したいが、なかなか人がいない。
やっと見つけた方に、再び尋ねる。
「あそこのちょっと先に、鉢植えで柿を作っている方、ご存じないですか?」
「ああ、ああ、知ってるよ、関谷さんとこ。」
そう聞いて、小躍りして私が喜んだのは、想像に難くないだろう。
「お住まいご存知ですか?」
「おお、おお、あそこのな、こういってこういって、こう曲がったところに、屋敷がある。あ、でも、今日はおらんかもしれん。あの地区で不幸があっての、今日はたしか葬儀だわい。」
関谷さんの家は意外と畑から遠く、道も、よそ者の私にはわかりづらかった。
しかも、私は方向音痴。
車を再度降りて、通りすがりの方に道を聞いて、ようやくたどり着いた。
「おお~」
大きな、大きな家だった。脇には畑もあり、どうやら梨を作っているようだった。
ご自宅の前には、鉢植えの柿もある。
何度か予鈴をならしたものの、どなたも、出てこない。
そう言えば「葬儀かもしれない」と言ってたっけ。
せっかっく、ご自宅まで辿り着いたのに、すごすごと帰るわけにもいかない。
そういえば、ここに来る前に、お葬式をしているお家を目にしたような。
薄い記憶を頼りに、来た道を戻った。