柿の美味しさの重要な要素の一つに、果肉の硬さがある。
最たるは次郎柿のようにカリカリした歯ごたえのもの。
もう一方は、会津身不知柿(あいづみしらずかき)のように、とろっとした果肉のもの。
多くの柿は、収穫直後は固い果肉だ。
先に挙げた次郎柿も、収穫後10日もすれば、やわらかくなっていく。
身不知柿においても、アルコール度数35度の焼酎を含ませることで、渋を抜く伝統的な過程が2週間ほどあるから、果肉がやわらかくなる。
どうも、果肉の固さは一般的な市場評価にもつながり、総じて、渋抜きの柿は、安い。
1玉100円を切るくらいでも販売されている。
種アリの甘柿である富有柿は、その倍くらいで取引されるので、間違いなく格差がある。
ところが、これを干し柿に加工すると、途端に高級品になったりする。
山梨の枯露柿(ころがき)などが良い例だ。
和歌山の紀の川柿も、価値を上げようとした柿の一つの例だろう。
渋柿である刃根早生や平核無(ひらたねなし)を樹上でなったまま渋抜きを行う。
未熟な時は、当然、渋が多いところに、渋を包んでいくので、断面にはびっしりと黒ゴマが生まれる。
紀ノ川柿の内部 |
左が普通の平核無(ひらたねなし)、右が同じ品種だけれど紀ノ川柿 |
その断面は特徴があり、少しドキッとする。
色目のせいもあるのか、食べると、少し黒糖のような甘さがあり、とても美味しい。
熟度を上げると同時に渋を抜くので、歯ごたえもしっかりあり、だんだんと柔らかくなる。
和歌山の紀ノ川周辺で、技術が確立されたので、「紀ノ川柿」と名付けられた。
渋柿の相場を覆し、高品質化&高級化に成功し、結構な単価で取引されている。
私も、現地の宇城さんの畑を訪ねたことがある。